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2021-02-06 国語の勉強のこと

2021年入試で使用された国語の素材文と今後の傾向

こんにちは。

大阪・神戸・京都の国語専門家庭教師住吉那巳枝です。

毎年、関西・関東問わず、入試問題の確認をしていますが、今年度入試で使われた素材文をまとめています。途中なのでかたよりはありますが、特徴的な部分をピックアップしてみました。

全体的に今年の入試は易化。文章自体が読みやすいものが多く、どこかで(模試やテキスト)読んだ?と思うものが多い。文章が難しく設問レベルを落として調整したというものはあまりなく、この文章ならこのレベルの設問が増える、したがって易化するなという感じ。これはコロナの影響を考慮してのものなのか定かではありませんが、多少はあるのかなと。

【2021年入試素材文について】

頻出著者(説明的文章・文学的文章のいずれでも出題される著者もいます)

説明的文章:池内了・池谷裕二・石川九楊・稲垣栄洋・内田樹・長谷川眞理子・森博嗣・小川洋子

文学的文章:いとうみく・小川洋子・工藤純子・関口尚・三浦しをん・森絵都・森博嗣(・湯川秀樹)

→論説文については頻出著者の作品は押さえておくと有利。作品は異なっていても主張・テーマの重複が多い。特に頻繁に新刊を出している場合、過去作品との内容重複が多い。複数の作品で同一内容が書かれていることが多々あるので主張やテーマ、論展開の特徴を把握しておくとよい。把握しやすいですから。この著者はこういうことを問題視しているのだ・こういう見解を持っているのだということを知っておくとよい。頻出著者の作品は塾テキストや模試でもよく出てきます。上記の著者は関西・関東問わず頻出。また、高校入試でも頻出です。石川九楊氏・池内了氏などは医学部小論文の課題文としてもよく出ます。

→物語は読書感想文の課題図書(小学高学年~高校)、何らかの文学賞受賞者の作品は要チェック。例えば、まはら三桃氏は「鉄のしぶきがはねる」で坪田譲治賞を受賞し、その後「鷹のように帆をあげて」「白をつなぐ」「たまごを持つように」「なみだの穴」など立て続けに出題されました。「奮闘するたすく」は2018年の課題図書になっています。

注目作品:

小川洋子「キリコさんの作品」・関口尚「はとの神様」・内田樹「先生はえらい」

→中高入試でどれだけ使うんだ!というほど使われた作品。複数の塾のテキストでも同一引用箇所・前後の引用箇所が多数引用されています。

 

稲垣栄洋「はずれ者が進化をつくる 生き物をめぐる個性の秘密」

→稲垣栄洋氏の作品は入試で頻出。この作品は2020年に出たものですが類似した主張・テーマは他作品でも扱われており、塾のテキストや過去問演習で触れた生徒も多いのでは? 「雑草のニッチ戦略」「弱者が生き残るために何をしているのか」という内容が出題されやすい。雑草の戦略を人間社会にあてはめて論じている部分は特に注意。

 

いとうみく「朔と新」

→ブラインドマラソンの話。自分のせいで兄が事故にあい失明したと責任を感じ、走ることをやめた弟と、弟への複雑な思いをいだきながらブラインドマラソンを始めた兄の葛藤と成長の物語。私も模試で複数個所使用。夏~秋に納品したな。

 

論説文については基本的に新しい作品が好まれます。物語・随筆・詩については、新しい作品も多いですが、古い作品も一定数使用されます。また、出版年は新しいものの時代背景の古い作品の使用率も上がってきています。鎌倉時代・江戸時代・明治時代あたりですね。一部の最難関はかなり古い作品を好んで使用しますので、しっかりとした対策が必要です。明治から昭和初期の作品は表現に特徴があるので慣れておくほうがいいでしょう。

SDGsの影響については、国語は以前からSDGsと関わるテーマが使用されていましたので、ことさら意識する必要はないように思われます。ただし、SDGsと関わっていることがより明確なテーマが扱われるかもしれません。性別や障がい・仕事観・海洋資源や次世代エネルギー・消費・生態系の保護などでしょうか。

また、抜粋した中にはありませんが、今年はコロナの影響で感染症に関する文章も出題されていました。すると、感染症予防に大きく貢献し、感染制御の父と言われたイグナッツ・ゼンメルワイス、感染症抑制に貢献したフローレンス・ナイチンゲールの話なども扱われてくるかもしれませんね。

『コロナ後の世界を生きる 私たちの提言 』は感染症そのものの話ではなく、コロナ禍の中でどう生きるかを扱っていますが、こうしたものも出題されやすいかもしれません。医学部小論文の課題文にも影響するかも。

 

2021年出典一覧(抜粋)…注目テーマは主観です。

出題校 著者名 作品名 出版年  
池谷裕二 脳はすこぶる快楽主義 2020 頻出著者
ラサール いとうみく 朔と新 2020 頻出著者
栄光学園 いとうみく 朔と新 2020 頻出著者
浦和明の星 いとうみく 朔と新 2020 頻出著者
桜蔭 稲垣栄洋 はずれ者が進化をつくる 生き物をめぐる個性の秘密 2020 頻出著者
ラサール 稲垣栄洋 はずれ者が進化をつくる 生き物をめぐる個性の秘密 2020 頻出著者
海城 寺地はるな 水を縫う 2020 注目テーマ
長谷川眞理子 モノ申す人類学 2020 頻出著者
浦和明の星 松村圭一郎 はみだしの人類学 ともに生きる方法 2020 注目テーマ
早稲田 村上陽一郎編 コロナ後の世界を生きる 私たちの提言  2020 頻出著者・注目テーマ
桜蔭 森絵都 あの子がにがて(『あしたのことば』) 2020 頻出著者
海城 若松英輔 弱さのちから 2020 注目テーマ
栄東 池内了 なぜ科学を学ぶのか 2019 頻出著者
駒場東邦 工藤純子 あしたまた、学校で 2019 頻出著者
筑駒 小島俊明 ひとりで考える―哲学する習慣を 2019 注目テーマ
西大和(県外) 中屋敷均 科学と非科学 その正体を探る 2019 注目テーマ
聖光学院 森博嗣 面白いとは何か? 面白く生きるには? 2019 頻出著者
奈良学園登美ヶ丘 いとうみく ぼくらの一歩 30人31脚 2018 頻出著者
奈良学園登美ヶ丘 稲垣栄洋 世界史を大きく動かした植物 2018 頻出著者
聖光学院 伊予原新 山を刻む(『月まで三キロ』 2018 直木賞・本屋大賞ノミネート作品
豊島岡 ひこ・田中 好きって、きつい。(『飛ぶ教室No53』) 2018 頻出著者
大阪星光 佐藤まどか 一〇五度 2017 2018年中学生読書感想文課題図書
渋渋 関口尚 はとの神様 2014 頻出著者・過去頻出作品
大阪星光 森博嗣 創るセンス 工芸の思考 2014 頻出著者
フェリス 山鳥重 『わかる』とはどういうことか ――認識の脳科学 2014 注目テーマ
浅野 野矢茂樹編 子どもの難問 2013 頻出著者
雙葉中学 川崎洋 教科書の詩を読みかえす(紙風船 黒田三郎) 2011 頻出著者
三宮麻由子 空が香る 2010 頻出著者
栄東 三浦しをん 風が強く吹いている 2009 頻出著者
神戸海星女子学院 赤瀬川原平 もったいない話です 2007 過去頻出著者
開成 山田玲司 非属の才能 2007 過去頻出著者
女子学院中 高橋敬一 昆虫にとってコンビニとは何か? 2006 注目テーマ
渋渋 石川九楊 日本語の手ざわり 2005 頻出著者
豊島岡 内田樹 先生はえらい 2005 過去頻出作品・頻出著者
雙葉中学 小川洋子 キリコさんの失敗(『偶然の祝福) 2004 過去頻出作品・頻出著者
西大和(県外) 手塚宗求 幸せな風景(『高原の随想 野性への回帰』) 1991 高校入試で過去によく目にしたような。
早稲田 田辺聖子 夕ごはんたべた? 1979 高校入試過去頻出著者
渋幕 菊池寛 極楽 1960 名作
洛星 井伏鱒二 山椒魚 1929 名作
渋幕 湯川秀樹 具象以前   頻出著者・大学時代、印象に残った作品

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