新小1生が悩むかなづかい 2)「ぢ」「づ」の使い分け

新小1生を悩ませるかなづかい。

新小1生が悩むかなづかい 1)長音(伸ばす音

に続き、「ぢ」「づ」の使い分けについて。

基本的に以下の場合、「ぢ」「づ」を用いて書きます。

①同音が続くことで生じた「ぢ」「づ」

例 ちぢむ(縮) ちぢれる つづみ(鼓) つづく(続)など

(ただし、「いちじく」「いちじるしい」は、あてはまりません。)

 

②二語の連合によって生じた「ぢ」「づ」(もともと独立した言葉が二つ組み合わさってできた言葉。したがって、二つの言葉に分けてもそれぞれが意味を持った言葉として存在できる。⇒「ち」「つ」で始まる言葉の前に別の言葉が付いたもの)

例 はなぢ(鼻+血) そこぢから(底+力) いれぢえ(入+知恵) まぢか(間+近) こぢんまり(小+ちんまり) ちかぢか(近々) ちりぢり(散り+散り) みかづき(三日+月) たけづつ(竹+筒) たづな(手+綱) こづかい(小+遣) こころづくし(心+尽くし) てづくり(手+作) こづつみ(小+包) はこづめ(箱+詰) みちづれ(道+連) ねばりづよい(ねばり+強い) 基づく(もと+つく)⇒「基づく」は本来「本付く」と表記したため

ただし、以下の語については【現代語の意識では一般に二語に分解しにくいもの等として、それぞれ「じ」「ず」を用いて書くことを本則とし、「せかいぢゅう」「いなづま」のように「ぢ」「づ」を用いて書くこともできるものとする】と文科省は定めています。

例 せかいじゅう(世界中) いなずま(稲妻) かたず(固唾) きずな(絆) さかずき(杯) ときわず  ほおずき みみずく うなずく おとずれる(訪) かしずく つまずく ぬかずく ひざまずく あせみずく くんずほぐれつ さしずめ でずっぱり なかんずく うでずく くろずくめ ひとりずつ ゆうずう(融通)

また、【次のような語の中の「じ」「ず」は,漢字の音読みでもともと濁っているもので上記の例にはあたらないため、「じ」「ず」を用いて書きます。

例 じめん(地面) ぬのじ(布地) ずが(図画) りゃくず(略図)

特に混乱しやすいのが、「世界中」と「地面」ですね。「地」には「ジ」と「チ」の音読みがありますが、「中」にはかつて「チュウ」という音読みしかありませんでした。じつは、2010年の常用漢字漢字改訂で「ジュウ」という音読みが追加されたのです。「『チュウ』がにごっているのだから『ヂュウ』じゃないん? 『世界』と『中』にわけられるんじゃないん?」という質問が中学生からあったのでお答えします。

「セカイ」と「ジュウ」と分ける⇒「ジュウ」という音を聞いて意味わかるか? って話です。「ジュウ」には「十」「銃」「獣」「従」などたくさん同音異字がありますからね。二語に分解したら意味がわからないので、①にあてはまりません。でも「ぢゅう」もいいよ~と文科省は許容しているので、間違いではないんです。間違いではないけれど、本則にしたがって覚えておくほうがいいので、「せかいじゅう」をまず覚えましょう、ということです。これね、とある塾の模試で出たのです。かなづかいの間違いを指摘させる問題。答えは「せかいぢゅう」を「せかいじゅう」に直させるものなんですけどね、文科省は間違いとは言っていない。本則ではないけれど許容というものの扱いは難しいですが、明確に誤答と言えないものは、出題しない方がよい。もし出すのであれば条件をつけることが必須ですね。

「せかいじゅう」の表記は、少し古い本などでは「世界中」ではなく「世界じゅう」となっていることがあります。これは日本語表記のこの原則と「中」に「じゅう」という読みがなかったことが影響しているのではないでしょうか。

余談ですが、2010年の常用漢字改訂で「十」の読みに「じゅっ」が追加されています。それまで、「十本」は「じっぽん」と読むとされていましたが、これにより「じゅっぽん」とも読めるようになりました。これは保護者の方の世代が教わった内容と異なるので注意が必要です。

 

「英語を教えられるんだし、国語は日本語やねんから教えるのらくやろ?」と、むか~し、とある進学塾にいたときに上司に言われましたが、いやいやいやいや。

国語を教えるためにはものすごい勉強が必要です。生き物である言葉を扱う教科なのですから。でも、学べば学ぶほど、日本語の複雑さ、おもしろさ、美しさを知ることができておもしろくもあるのですが。