質問上手になりましょう

プロの先生は、質問上手と言われています。

生徒が問題を解けないとき、その生徒のレベルに合わせて、

生徒が自分で解答を導けるように質問を重ねていきます。

考える作業を怠っているときには、考える作業をさせる質問をします。

 

一方、成績が伸びる生徒も質問上手です。

わからない、解けないというのではなく、

「ここまではわかるけれど、ここからはわからない」というように、

自分のできないところをわかったうえで質問します。

また、あらたに学んだことと今まで学んだことを関連づけて疑問を抱き、質問することができます。

これができる生徒は、異なる時期に学んだ知識を系統立てて理解することができるので、理解が深まります。

国語であるなら、漢字・言語事項・文法など単独で学習した内容が文章にどう反映されているのかを認識できるため、総合的な力がついてきます。

とはいえ、これを一人でできる生徒は多くはありません。

 

そこで、これを一人でできるような方向にもっていく指導が必要になります。

あることを学習したとき、その内容に関連することを質問形式で確認していくのです。

たとえば、

「私は空を眺めていた。刻一刻と万華鏡のように変化する空の色。それを忠実に再現したいと思うのであった。」

という文があったとします。

設問は「それ」の内容を答えるもの。答えは「刻一刻と万華鏡のように変化する空の色」です。

そこで、この設問文と解答周辺の文を使って質問をしていきます。

「空の色は何にたとえられているか」→「万華鏡」(表現技法)

「ここで使われている表現技法は何と何?」→「体言止めと直喩」(表現技法)

「変化と同じ熟語の構成の言葉、わかる?」→「寒冷」(熟語の構成)

「『それを』の文中での役割は主語、述語、修飾語のどれ?」→「修飾語」(修飾語=文法)

「『思う』に相当する主語は何?」→「私」(主語の省略=文法)

などなど……。

このようなやりとりを、設問文や生徒が理解しきれていない部分、重要な部分を用いて行っていきます。

すると、漢字は漢字、文法は文法と分けて学習していた知識が文章とどう関係しているのか、しだいにわかってきます。

そして、「この言葉は文中でどんな役割をしているか?」というふうに自分で考えることができるようになります。

自分で解決することもあるでしょうし、先生に質問することもあるでしょう。

そうなったらしめたものです。

 

もう一例を挙げるなら、わからない言葉があったとき、既習漢字の熟語はまず訓読みをさせます。

そして、訓読みと文脈から言葉の意味を考えさせます。

たとえば、「再現」。訓読みは「ふたたび」と「あらわれる」。

これをつなげて「ふたたびあらわれる。ふたたびあらわす」という意味、というように。

未習漢字の場合は辞書を引いて意味を調べるほうがいいですが、習っている漢字であるなら、

上記のようなやりとりを繰り返すことで、意味のわからない言葉を目にしたときに意味を推測できるようになります。

もし、読みがわからないなら調べることが必要ですし、読みがわかっても構成がわからないなら、質問すればいいのです。

これにより、熟語の意味と漢字の意味、熟語の構成を理解することができるうえに、現在の弱点もわかるので、効率よく弱点補強ができます。

 

複数のことを関連づけて覚えたり考えたりすることが苦手な生徒は多いものです。

「漢字を覚えるときには、意味や部首、熟語なども覚えましょう」と言われても、なかなか実行できません。

ですから、その癖づけを教える側が行い、徐々に一人でできるようにしていくことが必要なのです。