文章を正しく読み取る国語力
文章とは何か
文章を構成する要素は、大きさや意味によって単語・文節・文の3つに分けることができます。文章とは、文が集まってつながり全体として筆者の意図や心情などを伝えるものです。
- 単語
文を構成する最小の単位です。意味と性質を正しく覚える必要があります。
- 文節
語句が並んで、一つの意味を作っているものです。
- 文
文節が集まってつながり、ひと続きでまとまった内容を作っているものです。
語句の意味を正確に理解し、文法を正しく学んで文や文章の組み立て方を知れば、物事を筋道立てて考え、文章を正確に読み、書くことができるようになります。この力を国語力と言います。
国語力は、文法力・漢字力・語彙力・読解力・作文力の5つの要素に分けることができます。
文法力 文の組み立てと構成要素を理解する力
文法力は、文のつくりのルールを理解し運用する力です。文法を学ぶことでどのような種類の語句をどのような順番で並べることでどのような意味になるのかを理解できるようになります。
文法が理解できていないと、どんなにたくさんの言葉を知っていても、筆者の意図を正しく理解したり、自分の考えを正しく述べることはできません。
文法の基本は、主語・述語・修飾語の区別です。これらを正しく見抜くことで、その文の枠組みを捉え、筆者の意図を正しく理解することができるようになります。主語・述語・修飾語が文章の中でどのような働きをしているのか、どのように並べられているのかを理解することが大切です。日本語は、主語と述語が離れている文構造なので、何が言いたいのか、最後まで読まないと理解できません。その間に様々な修飾語が入るため、途中で文意を把握しにくくなることも多々あります。そのため、まず主語と述語をしっかりと押さえ、何がどうなのかということをふまえた上で文章を読むことがとても重要になります。
次に、言葉の順序や助詞、助動詞の理解です。これにより、文の中で筆者が強調したいことや細かなニュアンスを理解することができるようになります。
さらに、文をつないでいる接続語を理解することで、文章全体がどのように組み立てられているのかを知ることができます。どこが筆者の主張で、どこがそれに対する反論で、どこが筆者による再反論なのか、そしてそれを裏づける事実が述べられているのはどこなのかなど、接続語を理解することにより、文章を構成する文のつながりを理解することができるのです。
漢字力 小学校で学ぶ教育漢字のほかに、中学受験で求められる漢字の読み書きができる力
漢字力は、漢字の持つ意味と読みを正しく覚え、読み書きをする力です。小学校で学ぶ教育漢字は1006字、中学受験ではこれに加えて中学校で学ぶ1130字の常用漢字の中からも出題されます。したがって、これらを1つでも多く覚えておくことが大切です。
漢字は、表意文字に分類されます(表語文字に分類される場合もあります)。表意文字とは、1文字で意味を持つものです。例えば、山という漢字には「周囲よりも盛り上がった地形や場所」という意味がありますが、アルファベットのaには意味がありません。
このようなことから、漢字の成り立ちと意味、音訓読みができるようになれば、意味の分からない文や語にあたったときにその意味を推測することができるようになります。
例えば、次のような四字熟語が出てきたとします。これは中学入試で注が付けられたことがある言葉ですが、熟語の組み立て、漢字の意味、漢字の訓読みを覚えていると意味を推測することができ、だいたいの意味を捉えることができます。
例 風評被害 「風」には「うわさ」という意味がある。「評」は「価値を決める」「評価する」という意味がある。「被害」は熟語の組み立てにしたがって訓読みすると、「害を被る」。→うわさによって評価が決まり、害を被る。
語彙力 単語の意味を正しく理解して使う力
語彙力は、単語の意味を正しく理解し、記憶する力です。単語の理解が不十分だったり、記憶している数が不十分では文章構造の把握ができませんし、筆者の意図を正しく捉えることはできません。
特に、単語を覚えるときに同義語・類義語・対義語を同時に覚えると、論説文などで筆者の意図を捉える際に役立ちます。文章はふつう、特定の主題を持ちますが、この主題を同義語や類義語による言い換えによって、文章内で何度も繰り返すようになっています。筆者の主張が形を変えて繰り返されているのです。しかし、それだけでは単調になってしまいますから、対義語による比較や対比によって文章の理解を促したり、文章に深みを出したりしているのです。また、物語では同義語や類義語を覚えているなら、 主題の読み取りや心情理解に役立ちますし、対義語を覚えているなら、葛藤などを理解するのに役立ちます。
このように、語彙力が高いということは、単に言葉をたくさん知っているというだけではなく、文章構造の把握能力の高さや論理力の高さにもつながってくるのです。
読解力 文脈を正しく捉え、筆者の意図を正確に読み取る力
読解力は、文章の主語・述語・修飾語を意識しつつ、指示語や接続語を手がかりにして筆者の意図を正確に読み取る力で、①~③の文法力・漢字力・語彙力をすべて使います。読解と切り離されて考えられやすい文法力ですが、この力が読解力の要になります。
たとえば、次の文章を見てみましょう。
熱い茶わんの湯の表面を日光にすかして見ると、湯の面に虹の色のついた霧のようなものが一皮かぶさっており、それがちょうど亀裂のように縦横に破れて、そこだけが透明に見えます。(寺田寅彦「茶わんの湯」より)
――線「それ」とは何を指しているかという問題があるとします。「それ」は、「それが」でひとまとまりの主語であり、ここでは、「破れて」に対応する主語の内容を聞いているといえます。そこで、何が縦横に破れているのかを考えると、「(湯の面に虹の色のついた)霧のようなもの」を指しているとわかります。ここで「それ」が主語であることを押さえず、「それ」にあてはめて意味が通るという指示語の解き方だけを意識してしまうと、「一皮」と答えてしまうというような間違いをすることがあります。文の組み立てをきちんと理解できていなければ、指示語が指していると思って選んだ言葉を指示語にあてはめたところで、正しく文意が通っているかいないかの判断ができないのです。
なお、中学校入試の国語の問題では、出題された文章の意味を細かく、深く理解する必要はありません。必要なのは文章に書いてあることを使って文章の内容を読み取ることなのです。
出題される文章の中には大人の恋愛や経済問題のように、生活経験や社会経験が無ければ理解できない題材や、戦争に関する文章や平安時代に書かれた古文の現代語訳のように、当時についての知識が無ければ理解できないような題材が出題されることもあります。
このような問題は、特に難関校で多く出題されますが、小学生にそのような内容を正しく理解することは不可能です。中学受験で問われているのは、文章の構成を理解し、そこに書いてある内容を、その文章の中にある情報を使って読み取ることなのです。
しかし、背景知識や経験があることは当然有利なので、生活体験を増やしておくこと、受験勉強を通してさまざまな種類の文章にできるだけ多く触れることが大切です。
作文力 自分の考えを相手に正確に伝える力
作文力は、自分の考えや理解したことを相手に正確に伝える力です。中学受験では、問題文に与えられている言葉を組み立てて文を作る問題と、自分が知っている言葉を組み立てて文を作る問題が出題されます。
問題文に与えられている言葉を組み立てて文を作る問題は、筆者の意図や該当する範囲の文章を要約する問題です。この問題では最初に正しく文章を読解する必要があり、次に、自分の考え方を交えず、問題文中の言葉を用いて文を作成します。(一般的な記述問題がこれに該当します。)
自分が知っている言葉を組み立てて文を作る問題は、体験したことや見聞きしたこと、考えたことなどを自分の知っている言葉を使って文にまとめます。(一部の記述問題や作文・小論文がこれに該当します。)
ここで必要になるのは、①~④の文法力・漢字力・語彙力・読解力です。文法力・漢字力・語彙力・読解力を用いて、文章を正しく理解できていなければ、正しくわかりやすい、人に伝わる文章を書くことはできません。作文はいわゆるアウトプットの作業になりますが、人が読んで理解できる文章を書くためには、①~③の文法力・漢字力・語彙力を養うインプットの作業と、④の読解力を養う作業により人が理解できる文章の構造とはどのようなものかを理解することが必要になるのです。
※小論文と作文の違い
小論文と作文はよく混同されますが、小論文はある主張の根拠として、客観的な事実が必要です。一方、作文は書き手の感情や主観的な意見をもとに書くことが許されます。