偏差値の乱高下と最難関に受かるために必要なこと

こんにちは。

大阪・神戸・京都の国語専門家庭教師住吉那巳枝です。

いいときと悪いときの偏差値の差が激しい。こうした悩みを抱えている保護者の方は多いです。小5まではよくあります。やる気が減退気味、疲れがたまっているというような、ちょっとしたことで偏差値10程度は簡単に上下します。ですからそれほど気にする必要はありません。しかし、小6でこれが出てくる子は基本的にメンタル面でのコントロールがうまくできない、国語に限るなら文章よりも設問文の読み取りが甘いといった問題が潜んでいることが非常に多いです。ただし、後述しますが、力を急激につけている場合も乱高下が生じます。

小5までは偏差値10程度の波はなんら不思議なことではありません。10上がったからといって喜びすぎてもだめだということです。もちろん褒めますが、これを維持できるようになったときがいちばんの褒めどきです。10下がった場合も上がった場合も、原因を分析しどちらも注意点を確認して指導に反映していかないといけません。

ただ、20近くの波が頻繁にある場合は要注意とみています。この波が出る場合、集中力の波が大きい、気持ちのむらが大きい、時間配分ができない(一定時間考えてわからなければ飛ばすという判断ができない)、先入観を抱きやすいといった学力以外の面と、文章の基本的な読み方が身についていないなどの学力面での両方に問題があることが多いのです。

また、10前後の変動であっても、「テストできた!」と手ごたえを感じているのに点が出ない場合は危険です。これは何がわかっていて何がわかっていないかの判断ができていない、もしくはその判断が非常に甘いからです。10前後の変動をしていても手ごたえと結果が一致している場合は問題ありません。

一方、実力がついている最中の生徒さんも偏差値が乱高下しがちです。一例ですが、文章量が多く、理解に時間を要する文章が出た場合、精読の力がついてきていると解けた問題の正答率は高くなります。でも精読をすると力が安定するまでは読む速度は落ちますから時間がかかるため、手つかずの問題が出てしまい点が取れず低下します。また覚え始めた語彙レベルと文章があっていて文構造も把握しやすい場合、精読力がついてきているなら、余裕を持って解けるので点数が跳ね上がります。

とはいえ、「最難関を目指している子はいつも偏差値が高くて安定していますよね?」とおっしゃる方がいます。そうです。そこが最難関に受かる子の特徴なんです。なぜ高い偏差値を安定して取れるのか。最難関に受かる子は学力が高いだけではありません。しっかりとした基礎学力があるのは当然で応用力もありますが、それ以上に自分をうまくコントロールできるのです。やるべきことをどんな状態であっても一定レベルでこなすことができます。気分の波が少なく、集中力の波も少ない。自分で決めたことをきちんと実行できる、やるべきことを同じ精度でやれる。だから成績が高い位置で安定するのです。難問を解ければ最難関に受かるわけではありません。

自分がすべきこと、すべきでないことをどんな状態であっても正確に見極めて、優先順位を判断し高い精度で取り組める。自分の感情をコントロールできる。これが最難関に受かる子にはあります。

もちろん、お母様が多くをコントロールしていらっしゃるご家庭もあります。そういったご家庭の子は、お母様との間に絶対的な信頼関係がある場合が多いです。お母様の言う通りにしていれば大丈夫という関係ができています。これは、一見他律的に見えますが、それを守ろうとするのは自分の意思です。ですから、間接的に自分をコントロールできているといえます。子どもはお母様の指示を自分なりに納得して受け入れているか、お母様の言うことを聞いていれば大丈夫という判断をしているのです。

自分で決めてそれを実行する、お母様やお父様が決めたことを実行する。どちらの方法もお子様の性格にあっているなら正解です。それを実行しようとする判断を自分でし、行えることが大切です。お母様のやり方に反抗するのであれば、どうしたら受かると思うのかを本人が考え、実行するようにすればいいのです。厳しいことを言いますが、それができないなら難関校には受かるかもしれませんが、最難関には受かりません。中学受験は高校受験・大学受験以上に学力以外の面が影響を与えるということを覚えておいていただきたいと思います。

 

アメリカの発達心理学者エリクソンは人間の発達段階の中で、幼児期が自律性・自分の衝動をコントロールする力をつける時期だとしています。その基本的なものはご家庭のしつけのなかですでに身についているでしょう。それをより広い範囲にあてはめてその力を育めるのは、他者との関わりが増えてくる小4~小6の時期、高学年の時期です。小学校の高学年指導でも自律心(自立心ではありません)を養う指導などがされるのはそのためです。中学受験の勉強はこの自律心を養ういい機会と捉えられるといいと思います。最難関を目指す目指さないにかかわらず、自律心は一生涯、役に立つものとなります。