私立大学医学部小論文分析と対策ー1

これから数回に分けて私立大学医学部小論文分析と対策を書いていきます。また、別記事で大学ごとの対策も書いていく予定です。

私立大学医学部小論文分析と対策については、大学通信「医療系大学データブック2018」に掲載された記事をもとにしています。(「住吉那巳枝」はビジネスネーム。データブックには本名が記載。)「医療系大学データブック2018」は今月中旬に全国の書店で発売されていますが、医学部・歯学部・薬学部等の医療系大学への進学を目指す方必携です。医学部進学者のいる全国の高校には配本されているはずですので、進路指導室などでも見ることができると思います。

 私立大学医学部では、東邦大学と藤田保健衛生大学の一般入試では小論文は実施されていません。また2016年まで小論文を廃止していた東京慈恵会医科大学は2017年から小論文を復活させました。2020年の大学入試改革を考えると、現在実施されていない大学でも今後復活する可能性も考えられます。

まずは、小論文の形式についてみていきましょう。

【医学部小論文の形式分類】

A)テーマ型:東北医科薬科大学・国際医療福祉大学・杏林大学・慶應義塾大学・昭和大学・帝京大学・愛知医科大学・大阪医科大学・関西医科大学・近畿大学・久留米大学

 特定のテーマのみを提示し、自分の考えを論述させる形式です。たとえば、「健康寿命について」(2017年度関西医科大学前期入試)といった形でテーマのみが指定されるものです。素早く問いを立ててテーマを設定するための、課題発見力が必要となります。 

 

B)課題文型

 課題文型は文章と設問が設定されるもので、次のような型があります。

①読解問題型:埼玉医科大学

 国語の現代文の問題と同一の形式と捉えられるものです。本文の傍線部について理由を問うもの、内容を問うものなどがあります。長文を読み、迅速に情報を集めて処理する能力が必要です。

②要約型 :金沢医科大学

 文章を要約する問題です。文脈を捉え、筆者の主張や要旨を捉える力が必要です。

③テーマ型:岩手医科大学・東京医科大学・東京慈恵会医科大学(面接時間帯により課題文が異なる)・東京女子医科大学・東海大学・福岡大学

 課題文中で扱われているテーマについて自分の考えを論じる問題です。課題文の中心となる主張や内容を把握し、自分の考えを述べる力が必要です。また、本文の内容を正確に理解してその内容を踏まえて述べる力も必要です。

④上記の融合型:自治医科大学(②と③)・獨協医科大学(②と③)・日本大学(②と③)・北里大学(①~③)・聖マリアンナ医科大学(①~③)・兵庫医科大学(①~③+資料型)・川崎医科大学(①と③)・産業医科大学(産業医科大学は私大では唯一英文での出題がある。英文は注釈も多く、医学部受験生の英語力であれば十分理解可能なレベルである。)

 

C)資料型:順天堂大学・日本医科大学

 グラフや表などの統計資料が提示されるものや絵や写真などが提示されるものです。グラフや表が提示される場合は、特徴的な部分に着目し、その原因などを考え、分析力する力が必要です。一方、絵や写真などが提示される場合は、描かれているものや写されているものの背景などを考える想像力が必要です。

 

小論文のテーマや課題文、資料は医療に関係するもの、医療とはまったく関係ないもの、一見医療と関係がないように思われても視点を変えて見ると関係があるものに分けられます。それぞれ重視する力はことなりますが、多角的視点で物事を見る力、他者を理解する力、共感する力、コミュニケーション力などは多くの大学で重視されているといえるでしょう。これらの力を重視する傾向は、チーム医療の重視や、narrative based medicine(ナラティブベイストメディシン =人はそれぞれの物語を生きており、医療も患者が生きている物語の中の一部にすぎないという考えに基づき、医師が患者の語る病の物語に耳を傾け、共有し新たな物語を生み出す、対話と物語に基づいた治療)が取り入れられたことが影響していると思われます。参考程度としていた面接や小論文の位置づけも変化し、人間性、医師としての適性をより見るものへと変化してきているのです。