こと・事・もの・物…… どっちで書く?
こんばんは。
大阪・神戸・京都の国語専門家庭教師住吉那巳枝です。
記述問題の解答作成時に、「~という事」「~という物」と書く生徒がいます。この表記は避けてください。
「~ということ」「~というもの」の「こと」「もの」は形式名詞と言われるもので、この表記はひらがなで書くというのが、国語の世界での常識です。
「事」と漢字で表記できるのは、「世の中に起こる自然やは人事の現象。事柄。出来事。 大変な事態。重大な出来事。仕事。用件。物事のいきさつや事情」という意味で使う場合です。「事を起こす」「事を始める」「失敗したら事だ」などですね。
「物」と漢字で表記できるのは、「物体。物品。商品。品質。所有物。衣服。食物。何かの事柄・物事。ことば。文章」などの意味で使う場合です。「物を大切にする」「青い物を着る」「物を食べる」「物言い」などですね。
ただし、ここまでに挙げたものはひらがなで書いてもかまいません。しかし、形式名詞は漢字で書いてはいけません。
形式名詞以外でも、抽象的なものを表すときや接頭語・接尾語として使われる場合もひらがなで書きます。「もののあわれ」「もの悲しい」「見もの」などです。
これらと同様に「~してください」を「~して下さい」と書くのもだめです。「~してください」の「ください」は補助動詞というもので本来の意味を失い、動詞に付属的な意味を添えるものです。「下さい」は「与える」「くれる」の尊敬語である「下さる」の命令形ですが、「~してください」という場合、「与える」「くれる」という意味はなくなり、相手への要望の意味を添えるものになります。この場合はひらがなで表記します。
「飲み物を下さい」の場合は、動詞「下さる(「与える」「くれる」の尊敬語」の命令形なので漢字でかまいません。
「~して下さい」の表記は教育現場でよく目にしますが、これは適切とは言えません。