31年前に出題された文章が再び出題

こんにちは。

大阪・神戸・京都の国語専門家庭教師住吉那巳枝です。

2018年の洛星中学前期試験は井伏鱒二「屋根の上のサワン」。

このとき、昔、どっかで出たよな~、似た問題解いたような気がするな~と思ったのです。とはいえ、毎年、百校近くの過去問を見ているので、そら、どっかで出るか、と気にしていなかったのですが。

昨日、洛星志望の生徒さん用に過去問の山を探していたところ、長いこと使っていなかった洛星過去問(昭和50年代~平成初期)を発掘。この時代の洛星は、詩や論説+物語だったり随筆1題だったり、物語1題だったり、論説1題だったりと年度によりバラバラで今よりも知識事項が多かったりもしたため、かなりの期間使っていなかったのです。一時期後期志願用に使ったものもありましたが、それもかなり前。しかもこの過去問を解いたのは私が新卒のころ。20年以上も前の話。忘れます。で、その中にあったんです。1987年過去問に。井伏鱒二「屋根の上のサワン」が。どっかで出たな~が、31年前の洛星だったとは。もちろん全体的に問題は違います。問い方を変えていましたがほぼ同じことを聞いているなというのはありましたけど。

入試では、知識事項や漢字の出題については同じ学校で繰り返し出てくるというのはけっこうあるんです。高校入試でも特定の都道府県の漢字問題は数年ごとに同じ漢字が出ているとか。ただ、文章で同じものが出るというのはほかに記憶がない。私の勉強不足も十分ありえるのであくまでも個人の記憶です。

A校とB校で引用文がまったく同じということはよくあります。入試で人気の作品というのがあり、字数や出題のしやすさ、中学入試で使用できる部分となると引用箇所はどうしてもかぶってくるものです。

でも、まさか同じ学校で出るとは。洛星は文豪の作品を重視する学校ですが、2000年代まではそうでもないんですよね。入試でも頻出・子どもが読みやすい、梨木香歩「西の魔女が死んだ」、角田光代「キッドナップ・ツアー」、氷室冴子「いもうと物語」、池澤夏樹「南の島のティオ」なども出題されています。私立中学の入学前や入学後の読書感想文課題図書によく取り上げられるミヒャエル・エンデの「モモ」やサン=デグジュペリさ「星の王子さま」なども出題されました。

これは前期の話です。後期は前期とは全く違い、文章問題の形式は論説・物語各1題。基本的に存命のかたの作品中心です。洛星らしさが全面に出ているのは前期入試。各塾での偏差値は前期のほうが低く出ていますが、問題そのものは前期のほうが難しい。合格者平均も下がりますが、苦手な子はびっくりするくらい点が取れません。

2019年・2020年と存命中の作家さんの作品が出題されているので、2021年もその傾向が続くのか、文豪の作品に戻るのか。どちらにしても求められる力が大きく変わることはないのですけれどね。他校よりもはるかに長い文章を読む体力、筋道を正しく追って主人公の背景をふまえつつ出来事と心情を関連付けて正確に理解し推測する力、自分の頭の中で考えた答えを正確にわかりやすく文章化する力、見慣れない言葉が出てきても文脈から意味を推測しうろたえずに読解の基本に忠実に文章を読む精神力。これらを鍛えていくことが大切です。