開成中学国語入試はおもしろい

今年の開成中学の入試問題は、大学入学共通テストを意識したのか? というような問題でした。この10年ほどの傾向から最難関レベルでこの形式のものが出るとは思っていませんでした。どちらかというと中堅校のほうがこういったものを出す傾向にありました。最難関中学は10年以上前は通常の読解問題とは異なる形式での出題が比較的見受けられたのですが、この10年ほどはスタンダードな形式で高度な思考力を見る問題が増えていたからです。

そんな中での開成中学のこの問題。それもとてもうまく作られた良問でわくわくしました。

その問題は以下のようなものです。実物は四谷大塚のサイトで会員登録されているなら見ることができます。

北海道物産展を行うため百貨店から商事会社にカニ弁当の仕入れ依頼がきました。

商事会社では新宿支店の仕入れ販売を大西社員が、新宿支店よりやや規模の小さい池袋支店の仕入れ担当者を小池社員が担当します。そして、販売後の翌月の月例報告会で販売部長が売れ行き総数推移のグラフ(1時間ごとの販売総数をグラフにしたもの)を示しながら、両支店での成果を社長に報告します。「大西社員は500個のカニ弁当を発注し、小池社員は450個のカニ弁当を発注しました」、「新宿支店では見事にカニ弁当は完売~池袋支店では、20個の売れ残りが生じてしまいました」と報告します。そして、社長の考えを尋ねます。すると社長は、「部長の報告は客観性に欠ける。新宿支店の社員を高く評価しようとしている」と言い、さらに500個仕入れて閉店1時間前に完売させた新宿支店よりも450個仕入れて20個売れ残りを出した池袋支店を評価すると言います。

設問は、

問1)社長は部長の報告のどの表現に客観性に欠けたものを感じたのか、二つ書きぬかせる、

問2)新宿支店の担当者よりも池袋支店の担当者を高く評価した社長の考えを述べさせる

というものでした。

問1)は、部長の発言には「見事に~完売となりました」と「売れ残りが生じてしまいました」という表現があり、これを指摘させるも。言葉の使い方、コミュニケーション力、客観的に物事を伝える力などが見られます。(ちょっとした言い方に様々な気持ちが出てしまうんですよね。そういったことを注意できるかどうかって大切です。)

問2)は、まさに批判的思考力を見る問題。「完売=よいこと」を疑えるかどうか、様々な立場から物事を見られるかどうかが見られています。このとき、グラフの特徴、違いを見抜いて疑問を持てるかも見られています。

池袋支店よりも50個多く仕入れたにもかかわらず完売させた新宿支店は確かに素晴らしい。しかし、売れ行き推移のグラフを見ると、新宿支店は閉店1時間前に完売しているために、この1時間の間に買いに来たお客さんにカニ弁当を販売できていません。つまり、顧客の側からしたら満足度は低下します。しかし、池袋支店は閉店まで販売を継続でき、来店したすべての顧客を満足させられました。そのため、社長は小池社員を高く評価したのです。

一度、ご家族でこの問題を解いてみるとおもしろいかもしれません。中学生、高校生が解いてみて、批判的思考力がどのくらいあるか見るのもいいと思います。

昨年から、大学入学共通テストの対策問題を作っていますが、この問題を見て、勉強になると思うと同時に、負けられない! と(勝手に)刺激を受けています。