語句知識は中高の学習につながっていく

こんにちは。

大阪・神戸・京都の国語専門家庭教師住吉那巳枝です。

語句知識は入試にそんなに出ないのでやらなくてもいいですか? という質問を受けることがあります。ここ数年はほぼありませんが、以前はよく受けました。志望校の過去問にないからやらなくていい、塾のテキストにはあるけれど入試に出ないからその週は別の勉強にあてるなんて方もいらっしゃいました。

入試に出ないものは無駄という考え方を肯定も否定もしたくはない。それぞれですから。

ただ、語句知識は中高の古文・漢文と密接に関わっていることが多いので、語句知識の理解をおろそかにしたまま進学した場合、深海魚になりかねないということは覚えておいていただきたいと思います。

別の記事でも書きましたが、中高一貫校は早ければ中1の1学期から古文学習がスタートします。その後漢文学習が始まります。早いところですと、中1で現代文・古文・漢文を同時に学習します。公立の中学校では扱われない用言・助動詞の活用、漢文句法まで習います。これらに語句知識がどうかかわるのか。

最もわかりやすいのは、熟語の構成です。小学校でも学習しますが、「投球」なら「球を投げる」なので「下の漢字が上の漢字の目的語になっている」や「下の漢字にを・にをつけて意味が通じる」などの説明で学習していると思います。「頭痛」なら「頭が痛い」で「主語と述語の関係」などですね。この熟語の構成は漢文の基本構造と同じなのです。熟語の構成は主に10種類(分け方により若干変わります)ありますが、そのうち以下の5つが漢文の構造と関係します。

①主語 ・ 述語の関係(例:地震=地が震える)→漢文では「主語・述語の関係」

②補語・目的語の関係(例:着席=席に着く=「席に」は「着く」の補語、例:、読書=書を読む=「書を」は「読む」の目的語)→漢文では「述語・補足語の関係」

 

③類義語・対義語の関係(例:優秀=優れていて秀でている、例:上下=上と下と)→漢文では「並列の関係」

④修飾語 ・被修飾語の関係(例:良心=良い心)→漢文では「修飾語 ・被修飾語の関係」

⑤否定語と被否定語の関係(例:非常=つねでない)→漢文では「認定の関係」*これについては、否定語がつくもの以外にそのもののよしあしなどの判断を上の漢字が行い、下の漢字がその内容を説明します。熟語の構成では「不・無・非・未」がつくものと習いますが、漢文ではこれら以外に「可視(見ることができる・見られる)」なども含まれます。

このような熟語の構成を理解していると、漢文の返り点・返読文字・書き下し文の理解が容易になります。

 

中学受験で学習する内容は文法知識も語句知識も中高の学習につながるもの。「入試に出ないから」という視点で軽視してほしくないと思います。口語文法の理解は古典文法の理解に直結しますしね。

特に最難関を狙う子ほど、軽視しないほうがいいのです。これくらいのことはわかっていて当然という認識で授業が行われ、まったく意味がわからなくなり舞い戻ってくる生徒が毎年います。可能なかぎり対応しますが、できないことも多々あります。最難関に合格したのに古文・漢文は深海魚なんてことになったら理系であっても笑えません。学習する単元で不要なものなんて本来あるはずがないのです。志望校に受かるためという目的にフォーカスするあまり、本来の意味を忘れないでいただきたいと思います。もちろん、語句知識はすぐに理解できるからやらなくてもいいという方もいらっしゃると思います。それはなんの問題もありません。個人差がありますから。