英語が重視される時代だからこそ幼児期からの国語学習を

こんばんは。

大阪・神戸・京都の国語専門家庭教師住吉那巳枝です。

昨年10月、助詞は軽視されやすい という記事を書きましたが、この原因はご家庭での会話にあることがとても多いのです。

会話において、多くの場合、助詞がなくても意味が通ります。文化的・社会的背景の影響で日本人は察する力に長けています。ですから、助詞に限らず省略されている言葉を無意識に補って会話をすることが上手です。

「そこにあるコップ持ってきて」(そこにあるコップ〈を〉持ってきて〈ください〉)

「今から買い物行こうか」(「今から買い物〈に〉行こうか」)

「急がないと時間なくなるよ」(「急がないと時間〈が〉なくなるよ」)

こうした会話を日常的にされていないでしょうか?

このような会話を幼い時から続けると、小学校1年生で「て・に・を・は」の理解に時間がかかってしまいます。乳幼児期から英語を教わっているお子様ではさらに時間がかかることが多いと感じています。

「それ、すき」(「〈わたしは〉それ〈が〉すき〈です〉」

主語・助詞・助動詞が省略された会話、不完全な述語を使った会話も多いですよね。

これも国語力に大きな影響を与えます。日本語は助詞と述語部分の助動詞により、意味が大きく変わります。これが文章理解に大きな影響を与えます。省略された会話ばかりしていると、子どもは主語・動詞・助詞や助動詞はなくてもいいと考え軽視します。しかし、これはとても危険です。特に助詞・助動詞の軽視。文はこの二つによって意味がいくらでも変わります。

「あなたはそれ〈が〉すき〈そうです〉」

「あなたはそれ〈も〉すき〈ですね〉」

「あなたはそれ〈だけが〉すき〈でしたか〉」

「あなたはそれ〈は〉すき〈ではありません〉」

主語が同じでも助詞と述語部分の助動詞が変われば意味が変わります。

助詞・助動詞を軽視する子は、日本語の崩れた文を書きます。時制のはっきりしない文を書きます。主語・動詞を軽視する子は主体がわからない、対象がわからない文を書きます。これらの二つが重なると、何を言っているのかさっぱりわからない文ができあがります。間違った文に対して「なんかおかしい」と感じる感覚が身についていないからです。文章を読んでも、主語の変化が理解できず、誰が何をしているのかがわからなくなります。助詞・助動詞の理解があいまいなため、勝手な想像で理解をします。もしくはとばします。これが国語ができない原因になってきます。

3歳までに英語教育を開始された場合、ご家庭では徹底して正しい日本語を日常的に使用しないと、日本語で書かれた文章を正しく理解する力、日本語で正しく自分の考えを伝える力に影響がでます。そうしたお子様が小学校に入学されると、「ものすごく基本的なところでまちがう」「それだけはちがうという答えを選ぶ」ということが生じます。実際、そのようなご相談をお問い合わせの段階でうかがうことが増えています。

学習指導要領の改訂により、早期の英語教育は今後とても役立つと思っています。私自身、母親が英文科卒だったこともあり、乳幼児期から英語に日常的に触れていました。ドイツ語学科に進学しましたが、何の勉強もしなくてもTOEICで700点くらいなら取れていました。特にリスニングについては役立ったと思います。また、きれいな発音を身につけたいなら発音には臨界期がありますので、幼少時に英語に触れておくことはとてもいいことだと思います。しかし、だからこそ日本語を、国語をしっかり学習する必要があるのです。

ちなみに日本語指導者と国語指導者は教える対象と目的が異なります。日本語を母語としない人に日本人とコミュニケーションをとる力を養成する人が日本語指導者、日本語を母語とする人に日本語の文章を正しく読み、書き、日本語で思考する力を養成する人が国語指導者です。日本人である私たちが目指すのは、単に日本語でコミュニケーションをとることではありません。日本語の文章を正しく読み、日本語の文章を正確に書き、日本語で思考する力を養成することです。ですから、国語は単に日本語でコミュニケーションがとれればできるようになる科目ではないのです。日本で生まれ、日本に住んでいれば、日本語で会話はできます。しかし、自分の思いを正しく伝える、相手の言っていることを正しく理解する、書かれている文章を正確に理解するには訓練が必要です。大学の授業でドイツ人の教授に「大学はドイツ語を話せるバカを養成する機関ではない。日本語で思考することができない学生がドイツ語を学んで何ができるのか」と言われたことがあります。25年以上前のことですが英語は重要! という話を聞くたびに思い出す言葉です。言葉は手段にすぎません。母語による思考力養成が最も重要です。

英語が重視される時代だからこそ、きちんとした国語指導を幼児期から受けることをお勧めします。ご家庭でできるのであれば、それにこしたことはありません。ご家族との会話の仕方を意識的に変えることやゲーム感覚で文字・言葉を覚えていくこと、文を覚えていくことは可能です。

現在小1~高3までの生徒さんを指導していますが、日本ベビーコーチング協会の国語表現力UPトレーナーに認定されたのを機に、4月より幼児のお子様を対象とした指導を開始予定です。詳細につきましては、2月下旬にお知らせいたします。算数脳を強化する国語指導も現在勉強中です。経験的に身につけていたものが、研修や学びを通してより確たるものにできるようにしたいと思っています。時間帯につきましては、基本的に中学受験生の指導前の時間になります。現在受講中の生徒さんの日程を優先し、確定してから調整を図ります。

私は、将来大人になったときに役立つ国語力を養えば、受験に通るという視点で指導しております。その力がついてきたことを示すものとして中学合格があると思っています。中学受験は人生のゴールではない。その先に続く長い人生で役立つ力を、子どもたちにつけてもらいたいと願っています。