二つの模試で素材文が一致ーここから思うこと 四谷大塚と日能研

こんにちは。

大阪・神戸・京都の国語専門家庭教師住吉那巳枝です。

第1回の四谷大塚合不合と10月3日実施の日能研合格判定テストの論説文、出題文がまったく同じだったんですよね。

上田紀行「立て直す力」。高校入試・中学入試頻出著者です。

実は私もまったく同じ箇所で作成し納品済み、生徒の問題・答案を見てかぶっていることに気づきクライアント様に連絡し相談。結果差し替え作成しました。家庭教師をしているからこそですね。複数の塾の模試をいっぺんに見られますから。でも、これはほんとに頭をかかえました。ふつう、他塾の模試で何が出たかまで確認できませんから。というかしませんし。納品が大量にあった時期での差し替えでわたわた。素材文選定基準や作問観点が一致しているという意味で(文言の差はありますがまったく同じ問題もあり)私の感覚はおかしくないな、ということがわかったのはよかったのですが…。

素材文の重複はけっこうあります。新刊から選定していても、がっつりかぶることは多々あります。2020年の模試で使ったものが2021年度入試で出題されるのはいいのですが、10年以上前の前回の教科書改訂時、新規教材で使った文章が、新教科書で使用されると納品直後に発覚。急遽差し替えになったこともありました…。数か月前に選定して納品した入試対策教材の原稿に使った文章が、依頼された入試問題の素材文と同じだったこともありました。このときは地域的な関係で、受験対象者がすれるとのことで問題ありませんでしたが。

1冊の本からまったく別の作成者がまったく同じ箇所を引用する。問題作成者が使いたいと思う部分って共通しているんですよね。問いたいこと、読んでもらいたい部分。作問者はただ学力を見るためだけに文章を選定しているわけではありません。国語の文章を通してこういうことを考えてほしい、気づいてほしい、自分と照らし合わせて考えてほしい、心を揺さぶられる経験をしてほしい。そんなことも考えながら文章を選定しています。著作権の関係や様々な制約がある中での選定でも、そうしたことを考えながら本を選び、使用する箇所を選び、作成しています。テストを解いてここが解けていない、ここが解けた、偏差値が上がった、下がっただけでなく、できれば、「この本の続き読みたいな」と思ってもらいたいともひそかに思っています。私の生徒たちは本嫌いの子が多いのですが、文章題を解いている中で「この本の続きって先生知ってる?」と聞いてくることがあります。知っている場合でも知らない場合でも、「本買って読んでみるといいかもよ」と言うようにしています。すると、ほんとに買って読んでくれる子が出てくるんですよね。

読書嫌いの子に読書をすすめることは、私は基本的にしません。興味のないことをすすめられても苦痛になりますからね。

私自身は読書好きでした。小1から年間200,300冊と読んでいました。漢字力・語彙力はついたと思います。自宅には広辞苑や国語辞典がリビングにあったので、わからない言葉は調べるというのを小1から自然にしていました。でも、読書を通して学んだことが本当に生きたのは、大学生になり、大人になり様々な経験をしてからです。子どものときに読んだ本を大人になって読み返したとき、わからなかった世界がわかり、腑に落ちるという経験をし、初めて読書の意味がわかりました。また、大人になって経験したことを本で読むことで腑に落ちたこともありました。

私が読書の世界にのめり込んだのは、人との関わりからくるストレスが苦手だったからです。父の仕事の関係で転校も多く、学校が関わるたびに新たな交友関係を築くことが苦痛でした。一種の逃避です。心から本が好きで読んでいたわけではないと思います。だから、子どもたちの中に「本、嫌い」と言う子がいてもいいと思っています。ただ、本を読むことで見えてくる世界もあります。それを知らないのはちょっともったいないかなとは思うのです。

また、本ばかりで経験することを避けるのは危険だなと思っています。経験しなければわからないことはたくさんあります。知識と経験のバランスで人はでき上っていくと思うのです。かといって経験だけで読書をまったくしないのももったいない。人間が人生の中でできる経験なんて知れています。寿命がある限り、限界があります。その限界を広げてくれるのが読書です。世の中にはこんな人がいる、こんな価値観もある、そういうことを本を通して知ることができるなら、人生は豊かになります。

本嫌いの子がいてもいい。本好きの子がいてもいい。それぞれの子たちに、「本を読むのもいいよ、本から離れてやったことないこと、経験するのもいいよ」、ということを国語の勉強を通して伝えたいと思いながら、指導しています。とはいえ、なかなか入試というものがあると難しいこともあるのですけどね。

なんだかまとまりのない文章ですが、もし、国語の問題を解いていて、「これ続きどうなるのかな?」とお子様が口にしたら、「読んでみる?」と聞いてみるといいかもしれません。そこから読書への関心が広がるかもしれませんから。