消去法は使わない

こんばんは。

大阪・神戸・京都の国語専門家庭教師住吉那巳枝です。

選択肢問題を効率よく解くために、消去法を使うことがあります。この方法は間違いではありませんし絶対にしてはいけないわけでもありません。テストで効率よく処理するときに役立つこともあります。でも、この方法には大きな落とし穴があることも知っていただきたいと思います。

読解力がついていないのに常に消去法で問題を解いていると、ある時点からことごとくひっかけの選択肢にひっかかり点が取れなくなるのです。選択肢は学校のレベルが上がるほど難解になっていきます。本文の内容を巧みに言い換えて作ります。抽象度を上げて作ることもあります。すると、言い換えの表現を正確に押さえることができない生徒・抽象化することが苦手な生徒は、「言い換えの言葉or抽象化された表現」が本文の言い換えだとわからないため、本文に書かれていないと判断して間違えるのです。正答の選択肢の内容が文章のどこに書かれているのかを理解することなく消去法のみで問題を解いていると、だいたい小5の後半または小6になってから選択問題で点が取れなくなるという事態に陥ります。そしてそれを放置していると、記述問題もまずできなくなり、見当違いな解答を書くようになります。

そして消去法の一番の問題は、前述した「本文に書いていない」という点にあります。抽象化できない生徒だけでなく、問いの指定を正確に押さえない生徒・見落としがちな生徒も判断を誤るのです。

「本文の書いていない」と正しく判断するには、問われていることを正確に押さえる力があるということが前提です。選択肢には、本文に書いてあるけれども問われていることに対する答えとしては不適切というものがあるからです。さらに、本文に書いてあるけれども要素が不足しているという選択肢もあります。

これらの判断は、文章と問いの両方を正確に理解する読解力が身についていなければできません。

選択問題の基本は選択肢のどの部分が本文と合っているのか、どの部分が間違っているのかをきちんと精査することです。消去法で解いたなら、必ずその残った選択肢の内容が本文のどこと一致しているのかを確認しましょう。

そして、国語に苦手意識がない・国語は苦手だけれど記述問題は嫌いではないなら、選択肢を解くときも、書き抜き問題を解くときも、記述問題と同様に自分の頭の中で答えを作り出し、その答えと最も近い答えを選ぶことです。これは大学受験生には絶対やってほしいことですが、中学受験生の場合は導入時期を見極めないと国語嫌いを加速させることがあるので、慎重な判断は必要になってくると思います。私が指導している生徒については、ある程度記述問題の解答作成ができるようになった段階でこの方法を取り入れます。記述問題は大っ嫌い、国語が苦手という子については、選択肢のどこが本文と合っているか、どこが違うかの精査を徹底することから始めます。

国語の勉強を通して身につける力は単にテストで点を取る力ではありません。それよりも大切なのは、書かれている内容を正確に理解する力です。この力がなければ、どの教科の力もある一定のところで止まってしまいます。読解力がない、会話をしていて「てにをは」がおかしい、主語が抜ける、要領を得ない話をする。こうした傾向があるなら、消去法で解くことをいったんやめましょう。そうではなく、選択肢と文章を比べ、どこが本文と合っているのか、どこが違うのかを明確にするようにしましょう。これをしていくと、言い換え表現がわかっていない、抽象化・具体化ができていないなどの問題点が見えてきます。言い換え表現がわかっていないなら、言い換え表現を意識して読む練習や語彙力の強化をしなければいけない、抽象化ができていないなら要するにどういうことかをまとめる練習を行わなければいけない、といったことが見えてきます。選択問題で点が取れなくなってきたと感じることがあるなら、このように考えることを習慣化してみてください。

ちなみに、河合塾の現代文講師の小池陽慈先生が出されている「大学入試 無敵の現代文 記述攻略メソッド」は中学受験生にもお勧めです。生徒が読んで理解するのは難しいので、やり方を保護者の方が理解して、アドバイスするという形にはなりますが。この問題集を読めば記述採点がしやすくなると思います。