2020年度入試 洛星中学国語
こんにちは。
大阪・神戸・京都の国語専門家庭教師住吉那巳枝です。
洛星中学の国語の雑感です。
2019年は存命中の作家の作品が出題されていましたが、今年は洛星らしく、芥川龍之介の「トロッコ」からの出題です。2018年同様、全文が出題されました。
選択肢9題
記述5題(字数指定なし)
語句意味問題が選択肢で3題。問われている言葉そのものは難しいものではありませんが、人物の状況を踏まえて考えないと間違えるものがありました。辞書通りの意味にとらわれてしまうと間違えます。
選択肢は例年よりも易しいものになっていました。最終問題で、軽便鉄道の経路が示された略図があり、主人公の良平が乗ったトロッコの経路と重なる部分を選ばせるものがありました。これは文章にある「去年の暮れ母と岩村まで来たが、今日の途はその三、四倍あること」「左に海を感じながら」「竹藪の側を駆け抜けると、夕焼けのした日金山の空も、もう火照りが消えかかっていた」という部分を正しく押さえることができていたかどうかがポイント。ここに着目できれば、解けます。海が左にあるということは、北から南へ向かっていたこと、「岩村」よりも遠いところまで来ていること、が大きな手掛かりです。また、良平が日金山の空を見ていることもポイントです。図を使った問題は最近増えてきているのでこうした問題には注意したいですね。
記述問題は2018年同様、全問字数指定なし。設問文から問われていることはなにかという情報を読み取る力が必要になります。個人的におもしろいな~と思ったのは問11。「トロッコ」は主人公の良平が大人になり、子どものときにトロッコに乗ったときのことを思い出している話です。問われた部分は「彼はどうかすると、全然何の理由もないのに、その時の彼を思い出すことがある。全然何の理由もないのに? ――塵労に疲れた彼の前には今でもやはりその時のように、薄暗いやぶや坂のある路が、細々と一すじ断続している。……」という部分。ここから読み取れる良平の現在の生活がどのようなものかを答える問題です。妻子がいる状況で雑誌社で校正の仕事をしていること、傍線部の「全然何の理由もないのに?」や「塵労に疲れた彼の前には~その時のように、薄暗いやぶや坂のある路が、細々と一すじ断続している。」に着目すること、そして、子どものときの、トロッコを降りてから家に戻るまでの良平の心情をふまえること。このあたりがカギとなります。
実は、これとよく似た問題が去年(2019年)ある私立中学の定期テストで出題されました。問いの文言は若干変わってはいますし、傍線も少し短かった気がしますが、問われているポイント・答えの核が同じなんですね。トロッコは中学校の教科書でも取り上げらていますし、様々な問題集でも取り上げられていますが、この部分は公立中学校のテストで問われることはほぼありません。教科書準拠ワークでもここを設問として扱っているものは見た記憶がありません。
一方、私立中学では非常に問われることが多い部分です。この部分を問うのは、洛星なら当然、という感じですね。
小学6年生の男の子が、自分の置かれている状況とはまったく異なる状況にある人物、経験したことのない事柄についてどこまで正しく推測できるか。慮れるか。洛星を目指すなら必要な力です。
1点、大きく傾向が変わったのが漢字の出題形式です。これまでは(1)~(10)それぞれ一文につき一題=10問という形での出題でしたが、今年は4文出題され、それぞれに2~3問漢字の書き取りで、合計10問が出ています。「リンカイ学校では、エンエイ大会が行われる」というような文が4つ出る形式になりました。実際の問題はもっと長い一文です。同訓異字・同音異義語には注意ですね。