教材制作者の仕事

こんばんは。

大阪・神戸・京都の国語専門家庭教師住吉那巳枝です。

受験情報とはあまり関係ないのですが、教材制作という地味な仕事について書いてみようと思います。

教材制作者の仕事は、教材の原稿作成、他の人が作成した原稿を整理して本にできる状態にする編集作業、「校閲ガール」で取り上げられたこともある校閲・校正作業を行います(校閲は、内容の正誤や適否を確認する作業で、校正は誤字脱字のチェックを行う作業です)。原稿作成は問題のみ作成、問題と解答解説作成、解答解説のみ作成の3パターンがありますが、最も多いのは問題と解答解説作成ですね。記述問題がある場合は採点基準も作成しますし、作問設計書(何問出題し、何を問うか、配点はどうするかなどをまとめたもの)や予想得点率一覧などの作成も同時に行います。

模試作成は私の場合は素材文選定からすべて依頼されますので、図書館に行き、使用する本を選定し、問題と解答解説を作成し、初校校正までが基本の仕事です。素材文がもらえるという場合もあります。でも、少ないのではないかと思います。実際、私は毎年40~60本の模試を作成していますが、素材文をいただけたのは5回未満です。

教材作成は、一般的には教科と関係した原稿作成がメインですが、さまざまな教育関係の記事作成依頼、知能パズル的なものの作成依頼などもあります。原稿作成のみの依頼の場合は、初校までの修正対応で終わることが多いですし、修正なしで終わることもあります。しかし、原稿作成から編集まですべて依頼された場合は、外注スタッフへの校正依頼なども行い、校了まで見ます。教材を校了まで見るとなると最短3か月、長いと1年、平均半年かかります。

校正作業は、校閲をしながら文字・体裁の校正も行います。問題を解き直し、不成立な問題はないか、問い方は適切か、解答解説に誤りはないか、別解発生の可能性はないか、事実誤認がないか、漢字の例文などは教育上適切か、誤字脱字や体裁の乱れなどはないか、配点は正しいかなど様々な視点から確認をします。

以上のようなことを行うのが教材制作者です。

教材制作者になるには、出版社に就職する、編集プロダクションに就職する、出版社や編集プロダクションの外注スタッフになる必要があります。外注スタッフの場合は即戦力が求められますから、教科知識や作問センス、編集能力、校正能力などが重点的に見られます。作問試験などもあります。

私自身は、とある関西の大手塾勤務→全国展開している個別指導塾勤務(今はBグループに吸収)→教材制作編集プロダクションに勤務しつつ家庭教師→家の事情でフリーランスの教材制作者兼家庭教師、という流れで今に至っています。フリーになる際、編プロの社長が取引先にフリーになる旨を伝えてくれたり、私が担当していた取り引き先と直接契約するように勧めてくれたりしたおかげで、途切れることなく仕事をいただけています。

国語については、指導者もそうですが教材制作者も不足気味というのをあちこちで耳にします。教材制作という仕事がもっと知られたらいいのにという思いもこめて中学受験とは関係ありませんが、書いてみました。

ところで、この教材制作の仕事の中で、解答解説の作成は新人の先生にぜひとも経験してもらいたいな~と思います。出版社と契約してということではなく、生徒の模試などを利用して、自分で全問に解説をつけるのです。そしてそれを先輩の先生にチェックしてもらう。これが最も指導力を上げる近道です。で、解説作成ができたら、問題作成にチャレンジ。そしてそれをチェックしてもらう。この繰り返しで指導力はかなり上がります。自分で解説をつけていくとテキストの解説を読んだときに、「解説の中でここまで解説に入れたら生徒は混乱するからこの部分はカットしよう」「この部分はもっと掘り下げて解説しよう」といった判断もできるようになり、生徒に合わせた細かな指導ができるようになります。