教材制作者が作る教材と家庭教師などが出す教材制作との違い
こんばんは。
大阪・神戸・京都の国語専門家庭教師住吉那巳枝です。
プロ家庭教師や塾の先生が出す教材がたくさん市販されています。教材制作者の私は、生徒から「先生の名前がのった本はないの?」と聞かれることがあります。ないわけではありませんが、教材制作者は基本的にゴーストライター的存在です。市販教材の場合は、名前が載っても著者ではなく「編集協力」などの名前で載ります。「編集協力」は「原稿作成から編集」まで指したり、「原稿作成」を指したりと出版社により異なります。私は原稿執筆以外に編集や校正・校閲もしますので、編集者・校正者・校閲者として名前が載ることもあります。ただし市販の場合です。
教材制作者が作っているものは、学校直販教材や塾直版教材が中心です。また、塾の依頼を受けて教材や模試も作りますし、入試問題・プレテスト・各種業者模試なども作ります。これらには名前は載りません。
教材制作者の仕事は、基本的に匿名の仕事です。また、自分の作りたい教材を作る仕事でもありません。ですから、プロ家庭教師や塾の先生が教材を作るときとは違う力も求められます。
クライアントの営業さんが現場の声を拾いあげ、現場で求められている教材を作ることが第一ですから、自分の希望を通すようなことはしません。営業サイドの声、各クライアントの立ち位置(学校教材中心か塾教材中心かなど)を理解し、よりよい案があれば提案し、クライアントの希望と調整を取りながら売れる教材を考えることが第一です。ある意味、「自分」を消す必要があります。
何人もの校正者からの指摘を吟味し、自分が間違っていないか確認し、間違っていたら受け入れる、間違っていないにしてもよりよい案が来たらそれを受け入れて修正する姿勢も重要です。これができないとミスにつながることもありますから。校正者・編集者からの指摘を感謝して受け入れる、次回以降に役立てる姿勢がないとやっていけません。「自分はこういう教材を作りたい」という信念を持ちながらも、柔軟に対応しなければ生き残れません。
自分の作りたい教材を作るのもいいなと思うこともありますが、私の性格上、人から指摘してもらって受け入れるという場を失うことが恐いので、今の教材制作者の立場というのはとてもあっていると思っています。基本的に一人で仕事をしていると裸の王様になりやすくなりますから。そうなることが一番恐い。
自分の使っている教材や模試を生徒が使っているのを見ると、「あ、この塾でも使ってもらってるんだ」と、ひそかに喜んでいます。(自分が原稿作成した模試が海外の塾で使われているのにはさすがに驚きましたが。)裏方作業が好きなので、そういう意味でも今の立場があっているのでしょう。
家庭教師の仕事は生徒を支える仕事です。教材制作の仕事も、生徒や塾、学校を支える仕事です。そのことを忘れずに、主役である生徒のためにできることを考え続けていかねばと、このブログを書きながらおもいました。