帰国子女・インターナショナルスクール生で国語の文章を読むのが遅いなら……

こんばんは。

大阪・神戸・京都の国語専門家庭教師住吉那巳枝です。

現在、帰国子女・インターナショナルスクール在校生を複数名教えています。

彼らを指導していると読むのが遅いという問題を感じます。それも1行30字程度で二段組のテキストではそれほど問題がないのに、1行が65字程度になる入試問題や模試になると一気に読む速度が落ちて時間切れに陥るのです。しかも1行の字数が多いと、えんぴつで印をつけながらなのに、また同じ行に戻ったりする。視線の動きがテキストの問題を解いているときとは比べ物にならないくらい不安定になるのです。初めは乱視や視力の問題かな? と思ったのですがテキストではそんなことはないので説明がつかない。語彙力も影響はしているのですが、それにしてもこの視線の不安定さは何だろう? と過去問演習が増えてきた最近は特に気になっていました。

そこで他の教科についてはどうなのか気になり、お母様と本人に確認したところ、過去問で他の教科では時間切れにならないと言うのです。社会では時間があまるとのこと。この速度なら、この学校の社会の過去問では時間切れになるだろうと思っていたのに意外でした。実は入試問題、国語と社会、学校ごとにもちろん差はあるけれどもこの生徒の志望校の社会は字数が多い。時間と字数をもとに1分間でどれくらい読めばいいかを計算するとそんなに差はない。だから、これを聞いたときにものすごく引っかかりました。そこで暇を見つけては、縦書きと横書きに関する眼科の医師の見解、脳科学者の見解、縦書きと横書きに関する資料などを調べまくりました。すると、縦書きと横書きでは、大人は横書きのほうが読む速度が速いが小学生では縦書きのほうが速いこと、脳科学的・人間の身体構造的には横書きのほうが読みやすいこと、どちらが読みやすいかは慣れや個人差もあることなどいろいろとわかってきました。

そして、先日一人の生徒がテキストを斜めに置きながら読んでいるのを見て、20年ほど前、イギリス人の友人が「縦書きは読みづらいから横にして読む」と言っていたことを思い出したのです。縦書きの文章を横にして、文字が90度左に曲がっている状態で読むと言っていたんですね。その生徒には「テキストはちゃんと置く」といつもなら注意しているところですが、その時は、「そのテキストの位置、読みにくくない?」と聞いたら、「このくらいが読みやすい」と言ったんです。

これらのことから、以下のことを推測しました。

①幼少時から英語を読みなれている子たちにとって、縦書きを採用している国語の文章は読みにくいのではないか。

②社会(算数・理科もですが)は横書きなので、影響を受けないので時間切れにならないのではないか。

③一行の字数が増えると読みにくいと感じることが多くなるのではないか。

そして、この推測をもとに生徒たちに確認することにしました。

結果、イギリス人の友人と同様、「横にしたほうが読みやすい!」と言うのです。目の動きが上下になるのが気持ち悪い、ナチュラルじゃないと。そして、文字が90度傾いているのはまったく気にならないと。テキストを斜め置いて読んでいた生徒。あの読み方は、読みやすさと周囲の大人の視線を気にした結果とった苦肉の策だったのかもしれません。

読む速度に目の筋肉のやわらかさが影響していることはわかっていましたが、ほかにも目の動きの違いが影響しているようです。ある帰国子女の生徒は幼少時から英語の本しか読まなかったとのこと。日本語の絵本などは読んでも横書きが多かった気がするとお母様がおっしゃっていました。定期的に縦書きの文を読むようになったのは日本に来た小3の冬以降。国語の教科書と塾のテキストくらい。基本的に本は英語、マンガも英語、日本語で読む本も科学読み物などは読むけれど物語は読まない。そして科学読み物などは横書きのものが多い。横書きに慣れているのですから、縦書きの読みが遅くなるわけです。別の生徒も基本的に横書きしか読まないとのこと。考えてみれば、ネットも横書きですよね。そして、国語・道徳以外の教科書は横書きです。

では、そのような生徒はどうしたらいいか。以下のようにすることにしました。

まずは、縦書きの文章を横にして読んでもらう。それで速度が速くなるなら、そして理解が進むなら、縦書きの文章を横にしたまま読む!

幼少時からついた習慣をいまさら変えるのは難しい。受験生は間に合いません。縦書きに慣れさせたいのなら中学入学後でもかまいません。小6であれば、直前期の今から矯正して縦書きに慣れさせるのは無理です。小5も微妙な時期です。1年ちょっとでこれまでのやり方を変えてうまくいくか微妙です。明らかに速度が変化する場合は、本人が読みやすい方法で読めばいいと思います。一番大事なのは書かれている文章を本人が苦痛なく、正確に理解できることです。

もし、海外生活が長かったり英語を使うことが多かったりという環境にあるお子様で、国語だけ読むのが遅いという悩みを抱えていらっしゃるなら、上記の方法を試してみてもいいのではないかと思います。