大学入学共通テスト雑感ー中学受験と大学受験

こんにちは。

大阪・神戸・京都の国語専門家庭教師住吉那巳枝です。

関西の中学入試は共通テストと同日のため、共通テストを解くのは後回しになってしまいます。

今年は中学入試期間に校正を引き受けていたこともあり、合間をぬって解くことに…。

今年の共通テスト、全体的に去年よりは簡単ですが、これまでのセンター試験の平均と比較したら大差はないなという感じです。

 

大問1の評論。問1は漢字。センターのときから教育漢字も出題。今回は「援用」の「援」と「投影」の「投」が問われました。オの「投影」は中学入試の読み取りや読解問題中にもよく出てくる言葉。「意気投合」と同じ漢字。「意気投合」も中学入試の頻出四字熟語の一つ。

問2以降は読解問題。指示内容の理解など部分理解がしっかりでき、段落ごとの要点を押さえれば解ける問題。選択肢は最終問題の問6以外はあっさり解けてしまう。着目すべき点がすぐわかるものが中心なうえに。あからさますぎる選択肢が多いのでセンターより簡単だったような気がしています。選択肢のつくりがこれまでのセンターと違うところも少しひっかかっています。選択肢の質的統一性がない。これは今後また変わっていくとは思います。

とはいえ、文章を正確に読む力をチェックする問題になっていたと思います。大問1の資料問題は形式は試行調査に合わせたような形になっていますが、大問1の最終問題の問5の(i)はこれまでのセンター試験と同様の問題で、構成理解の問題でした。(ⅱ)は一定範囲の内容理解。(ⅲ)は複数テクストの問題で、新傾向の問題ですが、思考力を問うものかは疑問です。正確な文脈理解力を見ている問題になると思います。

 

大問2の小説の問1は語句意味。「術もなかった」「言いはぐれて」「足が遠くなった」。いずれも中学入試でもよく目にするもので、選択肢は中学入試よりもまぎらわしくなっています。

問2以降の読解問題は心情、心情理由、行動理由の説明など、問いの部分までにあった出来事とその際の心情や心情の変化を押さえて解く問題。広範囲に着目する必要はありませんが、表現の意味するところを正確に読み取る力が必要。灘・東大寺・洛星・桜蔭・筑駒・開成・麻布などの記述力重視の最難関で記述問題として出てもおかしくないような問題でした。資料問題は大問2の「羽織と時計」についての新聞書評を読み、評者の意見を読み取る問題と評者と異なる意見を読み取る問題。これは新傾向の問題ですが、こうした問題は中学入試では目にすることがあります。

現代文の資料問題はセンター試験と試行調査問題の間(ややセンター寄り)をイメージした問題のように感じましたが、思考力まではかるれかというとなんとも言えません。従来通りの力で十分対応可能な問題が中心です。これからさらに変わっていくと思いますが、最難関中学入試問題のほうが思考力を見る問題を出題しています。それも何年も前から。(もちろん、大学入学共通テストがいけないとか悪いというのではありません。むしろ個人的にはセンター試験のままでいいと思っていますから。思考力は二次試験で見ればいいのでね。)

共通テストをざっと解いて感じたのは、中学受験の国語学習は大学受験時にやはり有利に働くということです。最難関だけでなく、中堅レベルの学校でも中学受験時に高校現代文レベルの文章が出題されます。たとえば、高1で使用する教科書「国語総合」の筑摩書房版にある野矢茂樹「バラは暗闇でも赤いか?」という評論は、2014年関大中等部で出題されました。この引用文は裁判所職員の採用試験でも使用されました。受験をしなかったら高校生で初めて読む文章、大人が受ける試験で読む文章を、中学受験をする子は12歳程度で理解するのです。この差って、すごいことだと思いませんか?

私自身は中学受験がすべてとは思っていません。子ども一人ひとり成長過程が違うからです。でも、もし中学受験をするなら、志望校に合格することだけを目標にするのではなく、その先にある大学受験や、大学卒業後の人生にも目を向けて、勉強してもらいたいと思うのです。長い人生の中の数年の勉強・数年の努力が、その後の、大人になってからの長い人生を決めることにつながるかもしれないのです。