医学部小論文対策ー身近なところに目を向ける

こんばんは。

大阪・神戸・京都の国語専門家庭教師住吉那巳枝です。

医学部小論文指導では、生徒に、自分の生きている社会に対して関心をもつようにと伝えています。生活している場、当たり前すぎて見過ごしているところに目を向け、考える。これは小論文作成で役立ちます。

R3年愛知医科推薦入試の小論文は、2005年の東大の地理で出た問題を一部改変した問題でした。(大学では入試問題活用宣言というものがあり、参加大学間で過去問の活用を可能にしているので、これはまったく問題ありません。

東大の入試問題では、4地点の時刻表が示され、①成田空港の上海行きの航空便、②東京郊外の住宅団地のバス停(最寄りの駅前行き)、③人口約10万人の地方都市の駅前のバス停、④人口約5000人の山間部の村のバス停のどれかを記号で答えさせる問題でしたが、愛知医科の小論文ではその理由を論理的に説明するというものでした。①名古屋市郊外の住宅団地のバス停(最寄りの地下鉄駅前行き)、②人口約10万人の地方都市の駅前のバス停、③人口約5千人の山間部の村のバス停、④成田空港の香港行の航空便について、時刻表がA~Dで示され、A~Dのどの時刻表がどれにあたるのか、300字以内で論理的に論述するというものです。東大との違いとして、論述に含めてはならないが、2020年8月の同4地点の時刻表が手がかりとして示されていました。このヒントは大きいですね。香港行の航空便はコロナの影響で減便、山間部のバス停なら変化なし、ということから簡単にわかります。

バスなんて使わないし、飛行機も乗らない。使わないから知らない。そういう人もいるかもしれません。それはそれでかまいません。でも、自分が生きている社会では、世の中では、バスを使い、飛行機を使わなければならない人もいます。自分が使わないから関係ないという姿勢で、医師になったらどうなのでしょうか。様々な背景を持つ患者さんによりそえる医師になれるのでしょうか。自分は使わない、関係ないものでも、知ろうとする姿勢は重要です。情報化社会の現代、関心を持てばなんでも調べられます。知ることができます。

Narrative Based Medicine(ナラティブ・ベイスト・メディスン)という言葉があります。患者さんが病気になった理由や症状、病気に対する自分の考えを語り、患者さんが抱える問題を医療従事者が総合的に捉えて治療する医療のことです。この考え方と「自分には関係ないから知らない」という態度は対照的なものです。「そんなことで?」と思われるでしょうか?

文章には人がらが出ます。会話でもそうですね。会話は文章以上に心の奥底にあるものが出てきます。どんなに言葉を選んでも、わずかな表情や、たった一つの助詞の使いかた、語尾から本心が見えます。医学部入試では小論文と面接の両方、いずれかが基本的に実施されます。日ごろの姿勢、考え方、生き方が見られるのです。

医学部を目指すなら、社会に関心を持ってほしい。人に関心を持ってほしい。医療用語を覚えるにしても、ただ覚えるのではなく、その言葉の裏に広がる社会・世界に目を向けて、問題点や課題について考えてほしい。自分とどう関わっているのかを考えてほしい。それを続けることで、思考力だけでなく、人としてもまちがいなく成長できます。

思考力は短期間で養えるものではありません。小学生なら小学生なりでいい、中学生なら中学生なりでいい。外の世界に目を向けて、知らべて、疑問を抱いて、自分ごととして捉えて、考えることを大切にしてほしいと思います。