医学部を目指すのに必要な英数理以外の力とは

こんばんは。

大阪・神戸・京都の国語専門家庭教師住吉那巳枝です。

医学部を目指す生徒には、「国語力をつけること」「なぜと考えること」「世の中で起きていることを知ること」が必要だと話しています。といっても、ピンとこない生徒も多いもの。だから、なぜ必要なのか伝えたいと思います。入試の小論文を使って。金沢医科2021年の問題。基本再生産数の低下が感染拡大防止となるということについて述べた文章を読み、要約。そして、新型コロナウイルスの流行で、日本が欧米に比べて患者数が比較的少数だったのはなぜだと考えられるか、基本再生産数を踏まえて(=課題文内容を踏まえて)自分の仮説を述べる問題。

最低限必要なのは、文章中の以下の内容を理解する力。読解力・語彙力がないのは論外。

1)R0=β×κ×Dが基本再生産数を出す式(接触一回当たりの感染確率×時間当たり一人の「ヒト」が集団内で接触する人数×感染症ごとのおよその感染期間)、であること

2)βは感染症の種類によって異なり、公衆衛生学的対策で低下すること

3)κは社会のあり方で変化すること

4)Dは医学的措置で値を変えられること

5)基本再生産数は病気の感染性の減少・感染源との接触頻度の低下・有病期間の短縮により低下する=感染拡大防止になること

次に上記を踏まえたうえで、新型コロナウイルスの流行で、日本が欧米に比べて患者数が比較的少数だったのはなぜだと考えるのか、基本再生産数を踏まえた自分の仮説を述べる思考力・記述力。ここで、「なぜと考えること」「世の中で起きていることを知ること」が関係します。

新型コロナ流行時、欧米と日本の違いはニュースでも頻繁に取り上げられていました。手洗い・うがい・マスク着用の習慣の有無。パーソナルスペースの差。靴を脱ぐ習慣の有無など。自分の住む世界で起きていることを意識的に知ろうとする態度がどの程度かで、受け取る情報量は変わります。情報量が多ければいいわけではないが正しい情報を適切に選択すれば、役立ちます。

上記の点を頭にいれて、「なぜ日本が欧米に比べて患者数が比較的少数だったのか」と考える力が必要。

これらの力があれば、要約はできます。問いに対しては、たとえば、手洗い・うがい・マスク着用に着目するなら、βとの関係で説明できます。ちなみにここでは具体例を同定するという、読解で必要な力が役立ちます。

「なぜ」と考えることが習慣化していると、関連する情報・知識を適切に結び付けやすくなります。つまり仮説を立てやすくなる。そして、その仮説を立てた理由説明も容易になるのです。「なぜ」と問う力は一朝一夕では得られません。日ごろから習慣化しておくことが大切。「なぜ」と考え、仮説をたて、検証することは科学的思考に通ずるもの。大学に入ってから確実に役立ちます。

医学部受験では国語という科目は表立って重要だとは言われません。国公立二次で国語がある大学はごくわずか。私大では小論文中心なので、どうにかなると思われます。でも、小論文では、読解力・思考力(科学的思考力や論理的思考力、批判的思考力等)・記述力が問われる。これを養うのは国語。そして、課題発見力・課題解決力も必要。これは、自分の暮らす社会に関心を持ち、日々疑問を持つことで養われる。だから、医学部を本気で目指すなら、「国語力をつけること」「なぜと考えること」「世の中で起きていることを知ること」をしてほしいのです。

それは、大学に進学したあとも確実に役立つもの。授業を受け「そうなんだ」で終わる学生と、「なぜ今先生はこの発言をしたのか」「どうしてこの内容を学ぶ必要があるのか」と考える学生とでは、授業から得るものはまったく違う。どうせ勉強するなら、目先のことだけじゃなく先を見据えて最大限効果を上げることを考えたらどうだろう?

コスパ・タイパを本当に重視したいなら、目先のことしか見てないと大損するかも、と、私は思ってます。