医学部を目指すなら人間らしい人としての当たり前の感情を…

こんにちは。

大阪・神戸・京都の国語専門家庭教師住吉那巳枝です。

毎年、夏の時期はとある医学部専門予備校の私大小論文の分析記事の作成に追われます。書籍記事用の短いものとは別に、より深くまとめた分析記事も別途作成しています。こちらは医学部情報サイト掲載用です。

毎年私大小論文の課題を分析していて思うのは、根本にあるのはふつ~の人を私大医学部は求めているのだなということ。ふつ~の人とは、人間らしい人であるということです。私大医学部小論文の課題はバラエティーに富んでいます。多くの大学は課題文型かテーマ型ですが、愛知医科のように判じ絵を出したり、順天堂のように絵を出したり、日本医科のように映像を見せたりするところもある。こうした大学であっても、見ているのは人としてまっとうな感性があるかどうか。患者を前にしたときに医師として人間らしい対応ができるかどうか。そういったところを見ているように感じます。

今年の日本医科の問題では「つみきのいえ」というアニメーションを見て思ったことを述べるというものが出題されました。「つみきのいえ」は2008年に公開されたアニメーション映画です。海に沈んでゆく街で暮らす老人は海面上昇にともなってレンガを積み重ねて家を上へ上へと建て増ししていく。冒頭の場面は一つのワイングラスと魚をメインにした食卓。おじいさんが一人で食事をしています。ある日、増築作業中におじいさんはパイプを海に落としてしまい、潜水服を着て海の中へと探しにいきます。

海の中にはこれまで過ごしてきた部屋が続いている。その部屋にはその時々の思い出が眠っている。おばあさんとの別れ、娘夫婦と孫との日常、娘の結婚、妻との出逢い…。回想シーンが繰り広げられていきます。一番下の部屋にたどりつくと、一つのワイングラスが転がっています。その部屋の思い出は妻と二人でこの家を作り始めたときのもの。そして、二人でワインを飲みながら食卓を囲んでいるもの。おじいさんは、転がっていたワイングラスを拾い、今生活している最上階の部屋へと戻ります。その部屋で二つのワイングラスにワインを注ぎ、乾杯をする。

このアニメを見て何を思うか。人の一生、人間にとっての思い出の意義、温暖化による海面上昇はひとごではないでしょう……。このおじいさんの姿は遠い未来の子孫の姿かもしれない。難しいことを答える必要は何もないのです。人として当たり前の感覚を、当たり前にわきあがるであろう感情を正確に伝えることができればいいのです。

だから医学部を目指すなら、人間らしさを、人としての当たり前の感情を、幼いうちから大切に育んでほしいと思います。