入試直前は叱ったらだめ?

入試直前期。不安定になり、いらいらしたり、無気力になったり、といったことはよくあります。年下の兄弟やお母様に八つ当たりなんてこともありますね。大人でも試験の前は不安定になるのですから、11歳、12歳の子どもであればなおさらです。

 

保護者の方から「この時期はとにかく叱らないようにして、ほめて気持ちを上げるようにしていますが、本当にそれでいいのでしょうか?」というご相談をよく受けます。これは生徒さんのタイプと心の不安定さをどのように外に出しているかで対応は異なります。この時期、先生に対しても態度が悪くなったりする子もいますが、基本的に私はたいてい流します。反応しません。いつもどおりに接します。叱ることもしませんし、むやみにほめたりもしません。いつも通り、ほめるべきところではほめます。ただし、一つだけ叱ることがあります。

 

それは、人のせいにした場合。受験することを、勉強のしんどさを、「お母さんがやれって言ったから」「お父さんが決めたから」「先生がやらなあかんって言ったから」と言って人のせいにする。これだけは許しません。直前期であろうが叱ります。やる気にさせるという覚悟と責任を持って叱ります。(それでも心の中ではひやひやしているのですが…)

 

お母さんや先生がやれと言ったからであろうが、お父さんが決めたからであろうが、最終的にやると決めて行動したのは自分。この学校に行きたい、受験すると言ったのも自分。子どもであろうが、自分の言動には責任を持たなければいけない。受験は誰の者でもない自分のもの。人生も自分のもの。一番苦しいときに人のせいにして許されてしまった子は、その後の人生でも辛いことがあったとき人のせいにする癖がついてしまう。だから、これだけは許しません。その子の人生をトータルで見たときに、許してはいけないと思うのです。

 

私の生徒に、「やれって言うたからやってるだけや」と言った生徒がいます。突き放し、叱りました。「受験をしたくないならやめたらいい。先生の人生でも先生の受験でもない。君の受験で君の人生や。他人が決めることなんてできないし、したらあかん。だからやめるんやったらやめると言いや。先生は怒らない。もしお母さんやお父さんに怒られるって思うんやったら先生が絶対にそれはさせへん。自分で決めるんや」と話しました。その後はまあ、いろいろと話をし、授業はいつも通り行い、午後からは冬期講習。その日の塾の授業では、テストでトップに入り、晴れ晴れとした気持ちで帰ってきた、自分でわからなかったところを整理して取り組みだしたとお母様から連絡がきました。つい先日のことです。

 

子どもは、親や先生が機嫌を取ろうと気を遣えばそれを察してさらにいらつきます。思春期に入りかけの男の子は特にそうです。自分のどうしようもない気持ちを、不安を、八つ当たりしたりすることで何とかバランスを取ろうとしています。ですから、そこでこちらが動揺してはいけない。いつも通り、ほめるべきところではほめ、いらつきや八つ当たりは流す。でも、人のせいにしたときだけは、やる気にさせるという覚悟と責任を持って叱る。人のせいにしたことを放置すると、万が一不合格だったときの受け止め方にも影響するのです。受験に失敗したとき、「せいいっぱいやったと思う。だから次はもっと頑張ろう」と思う子と、打ちのめされる子の違いの一つは、「人のせいにしたかしないか」にあると感じています。