あわい恋心がテーマの入試問題……

関西は入試直前期。京都のR系の学校では先月すでに入試があり、今月に入って岡山でも入試開始。

生徒たちも過去問演習が中心になっています。

で、タイトルの恋心がテーマの入試問題。最近、以前よりも高確率で出題されます。あわい恋心がテーマのものから恋心と友情を絡めたものなど……。けっこう前に重松清さんの「ヨコヅナ大ちゃん」や伊藤たかみさんの「ミカ!」などが出て、小学生の恋心が中心の場面が出題されましたが、最近は、もうちょっと大人向けのものも出てきています。

先日のこと。

「『甘い香りが残っていた』には、どのようなことが表現されているか」、といった問題を解いていた小6男子生徒。
答えは「少女に対する少年の断ち切れない恋心」が答えなんですが。
「甘い? なんで? 外で二人で話してたんやろ? 帰ったんやろ? 甘い? あっ、そっか……ケーキ食べた! 外やからアイスクリームか!」

うん……。君のそういうところ、先生は好きだよ。でもね、これ国語の問題だからね。今は直前期でね。文章中に手がかりがあるから探せと言うたやろ? 忘れんといて……。

毎年のことですが、恋愛系になると男子は苦手な子はとことん苦手。「あ、今シャッターおりたな」というのがわかる。「わけわからん。何いってんの?」と思っているかんじが伝わってくる。一方、女の子は鋭い。実体験も影響しているのでしょうね。体験したことのないことであっても、文章の内容を手がかりにして考えればよいのですが、これができなくなる。論説文などでは感情表現が基本的にありませんから、難しい、わからないと思いながらも文章中に答えの根拠を求めることができる。ところが、文学的文章の場合、心情理解になるとどうしても文章内容より自分ならどうかという視点が生まれやすくなる。悲しい、嬉しい、そういった感情は体験したことがありますからね。ただ、その感情が生まれるきっかけが恋愛になるととたんにわからなくなる。感情が生まれるきっかけはわからないけれど、生じた感情そのものはわかるから混乱する。本文に意識をフォーカスすればきちんと正答は導けるのですが、気持はわかる、でもなんでそんな気持ちになるのかわからん! という状態になると、本文にフォーカスできなくなるんですね。これはなれるしかない。どんな文章でも本文中に手がかりを求めることを徹底する。上位層の子はこれができるんです。

とはいえ、体験したことがあることを理解するのはたやすい。だれかを好きになる気持ちは、体験したことのある子のほうが理解しやすい。だから、男の子よりも成長が早く共感力の高い女の子のほうがこういった問題はよくできるのでしょう。

異性を好きになるというのは、自分とまったく異なる人を理解するはじめの一歩。もちろん恋愛をしなくても他者を理解する力を育むことはできますが、一番身近で一番違う存在が異性。家庭内では男の子にとってお母さんや姉妹、おばあちゃん。女の子にとってはお父さんや兄弟、おじいちゃん。異性は家族の中にもいることはいますが、家族という関係の中で育める他者理解力と血縁のない他人との関係の中で育む他者理解力はまた違うと思うのです。と、考えると、異性を好きになって相手を理解しようとするのはいい経験、と思うのです。