読解問題に対する勘違い
男の子は論説文や説明文が得意。女の子は物語文や小説文が得意。
とてもよく聞く言葉です。
でも、これに該当する生徒さんには、根本的な問題があります。それは、読解の基本が身についていない、ということ。先入観を持って文章を読んでいる、ということ。本物の読解力があれば、入試に出るような文章ならどんな文章でもきちんと得点できます。
以下は、国語指導者兼国語問題制作者の視点での話です。
国語の問題を作るとき、とくに模試では、本文に根拠のない問題を作成することは基本的に厳禁です。文脈を正確にとらえ、論理的に考えることで正解にたどりつける問題を作成しなければなりません。「物語なんて、登場人物の気持ちを想像しないとわかんないよ!」という人がいますが、そもそもその考えが間違っています。登場人物の気持ちは自由勝手に想像するものではなく、文章中にある登場人物の言動をもとに導き出すのです。そこには明確な根拠があります。選択問題・書き抜き問題では必ず明確な根拠があります。
入試の記述問題、特定の入試に焦点を合わせた模試や入試対策用の問題集、思考力や表現力を育成することを意図したテキストでは、あえて想像させるものもあります。しかし、ここで、誤解しないでほしいのは、国語の問題における想像とは、あくまでも本文の流れを踏まえたうえで考えるということです。その結果、解答に幅ができることもあります。こういう考え方もできるし、こっちの考え方もあるよね、というように。その場合はいずれも正解になるのです。しかし、本文の流れを無視したり、脈絡のない想像をして答えたら×になります。あくまでも本文の内容を押さえたうえでの想像です。「あなたが○○(登場人物名)だったなら、あなたはどのように行動するか」という形式での記述が出ることもあります。こういう場合も、登場人物が置かれている立場を正確に捉えて解答しなければなりません。そのうえで自分なりの考えを述べるのです。記述問題の採点基準には必ず入っていなければならない要素というものがあります。それを押さえられるかどうかは、文脈を正しく捉えられているかどうかにかかってきます。読解の基本が完璧に身についていれば、文章によって大きな差がでることはそうそうありあません。
文章内容によって得意不得意があるのなら、読解の基本を見直し、先入観を捨てましょう。物語文は想像しないと解けない、論説文は難しい言葉が多くてわかりにくい、そういった考えは不要です。受験生にとって難しいであろう言葉には語注がつきます。難しいと感じても語注がついていない言葉は、文脈から十分意味を推測できるものです。見慣れない言葉が多いと難しく感じるものですが、そもそも見慣れない=難しいわけではありません。なによりも大切なのは、書かれている文章を書かれているとおりに正確に理解することです。(ただ標準レベルの問題であまりにも知らない言葉がある場合は、語彙力に問題がある場合があるので鍛える必要はありますが……。)
この力、実はコミュニケーションにおいても非常に大切なんです。相手の言うことを先入観なしで捉える、話の流れを正確に理解して相手の考えを捉える。これができないと、正確な意思疎通は測れません。社会に出て、接する人の幅が広がったときにこの力がないと苦労するだけでなく、問題を起こす可能性すら出てきます。
国語の読解問題が苦手という場合、大人になってから苦労する可能性があるということをちょっとだけ、頭の片隅に置いておいていただけるといいな、と思います。