精神的に幼い子は中学受験に向かない?
「精神的に幼い子は中学受験に向かないんでしょうか?」
先日、生徒のお母様からこんなことを言われました。だいたい毎年聞かれます。塾の先生にそのように言われて悩まれるお母様もいらっしゃいます。
このものすごく正体不明なわりに多くの保護者の方を不安に陥れる「精神的な幼さ」「精神的な成熟」という言葉。私は、生徒さんに対してこの言葉は意識的に使わないようにしています。それは、「精神的な幼さ」「精神的な成熟」という言葉のいずれも、言う人によって意味合いが違っていることが多く、その意味も広いことが多いからです。
中学受験に影響する精神的な幼さで一番受験の結果に影響すると感じるのは、自分の現状を正確に認識できない(しようとしない)、その改善ができない、という点です。
「自分が今何ができないのか、できないのはなぜか、できるようにするために何をしなければならないのか理解し、行動に移すことができる」ことが中学受験生に必要な「精神的な成熟」であると言えます。
「精神的に幼い」子と「精神的に成熟」している子の違いは、たとえば次のようなものです。
国語の文章題で、いつも同じ形式の問題でつまずく。そのとき、「苦手だし、このくらいできなくてもほかで取ればいい」「苦手だからやりたくないし、やらなくていいや」と思うか、「自分はこの形式の問題が苦手だ。だから、できるようにしなければならない。塾の先生に来週質問しよう」と思うか。
友だちから遊びの誘いがあった。でも塾の宿題が終わっていない。「何とかなるだろうから遊びに行こう」「適当にやれば時間はかからないから遊びに行こう」と思うか、「遊びに行って帰ってきたら〇時になる。そこから宿題をやっても終わらないだろうから、今日は遊びに行くのはあきらめよう」と思うか。
このレベルの判断をきちんとできるかできないか、行動に移せるかどうかの違いです。
でも、これ、大人でもできない人、いますよね? たとえば、仕事でできないことにぶつかった。それをできない自分くぉ認められない人っていませんか? 私はできない自分を認めるということが一番難しいと感じていました。プライドが無駄に高かったのだと我ながら思います。社会に出て数年(いやもっとかも)そんな状態でもがきました。しかし、できない自分を認めると、とてもラクになること、自分が成長できること、助けてくれる人がたくさんいることに気づきました。
できないことを受け入れて、対策を考え、行動する。これが大切です。
でも、なかなかできない。できないならできるように導く。そうなるように周りの大人が誘導してあげればいいのです。「これができたらどんな自分に変われるか」「今の行動が受験のときの自分にどう影響するのか」を問いかけて考えてもらう。目標を自分で立てるようにし、そのためには何が必要なのかを一緒に考える。その達成のためには、勉強の内容だけでなく、時間の使い方、起床・就寝時間の調整も必要かもしれません。それも一緒に考える。
保護者の方がすべて決め、それに従うというのが合う子もいます。でも、「精神的に幼い」子は、感情優位で自分のしたいことをしたい!と思う子が多いのです。ですから、それを利用して、本人主体で動く(ように最初は見せかける)ようにするのです。自分が人生のかじを握っているということ、自分の人生の責任は自分で取らなければいけないということを意識させることが大切です。そうすると、言い訳をしなくなったり、できない理由を自分の中にさがすようになったりします。そうなれば、しめたものです。
中学受験で必要とされる「精神的に成熟」しているとは、自分の現状をきちんと理解し、解決するための行動ができることです。
もちろん、大人びた思考ができることは有利ではあります。そして、そういう子は語彙力も豊富ですから、国語でも有利です。先日テレビで放送された「日本一頭のいい小学生」を決める番組に出ていた小学生は広い意味で精神的に大人なのだろうと思います。それは中学受験では確実に有利になります。でも、それをすべてのお子さんに求める必要はありません。それぞれ個性があり、それぞれのよさがあります。それをつぶすのはあまりにももったいないと思います。