助詞を軽視しないでほしいー「は」と「が」の違い
こんにちは。
大阪・神戸・京都の国語専門家庭教師住吉那巳枝です。
記述問題の解答をチェックしていると、「は」と「が」の使い分けがあいまいな子が多いものです。感覚的にはわかっていますし、なんとなくおかしいとは気づいているのですが、字数の多い解答を一文で書こうとするとおかしな文になる。でも、字数が多いのでどこがおかしいのか時間内に判断がつかない。
ここでは意味が変わってしまう「は」と「が」の使い方に絞って説明しようと思います。
「は」も「が」も主語をつくる言葉ですが、厳密には「は」は主題を「が」は主語を示します。ですから、述語部分に何が来るかで使い分けないと、なんだか不自然な日本語になってしまうのです。
主題を表す「は」:主題とは、文のはじめに位置し、何についての説明なのかを伝えるものです。したがって、状態や性質の主体を表します。簡単に言うと「は」は形容詞・形容動詞・名詞とともに使われます。
(例)春の風はさわやかだ。(春の風についてどのような風なのかを説明)
父は会社員です。(父についての説明=会社員である)→「父が会社員です。」は不自然になります。
主語を表す「が」:動作や存在、出来事などの主体を伝えるものです。簡単に言うと動詞とともに使われます。
(例)弟が泣き出しました。(「泣き出した」という動作の主体=動作主が弟であることを示している)
ただし、「は」と「が」が入れかわることはよくあります。
A:「は」が動詞とともに使われる場合。
B:「が」が形容詞・形容動詞・名詞とともに使われる場合。
これらの場合は、特定の意味をふくんだ文に変わります。
A:「私が話した。」と「私は話した。」という文を比較すると、「私が話した」は話すという動作主が「私」であることを示しますが、「私は話した」とすると、「話しているのは私」で「ほかの人は話さなかった」という意味になります。
B:「私は彼の兄です。」と「私が彼の兄です。」という文を比較すると、「私は彼の兄です」は「私」の立場を説明していますが、「私が彼の兄です」とすると、「『私』こそがまさに彼の兄で、私以外にこの場にいませんよ」という意味になります。
Bについては、次のように考えてみるとわかりやすいかもしれません。
「あなたは誰ですか」という質問に「私は彼の兄です」と答えますが、「彼のお兄さんは誰ですか」聞かれたら「私が彼の兄です」と答えますよね。逆にするといまいちかみ合っていない印象を受けるのではないでしょうか。
また、「は」も「が」も目的語を表すことがあります。
私はりんごが好きだ。/私はりんごは苦手だ。
などですね。こうした使い方の理解があいまいな子は誤読をしやすいので注意が必要です。このような短文ではわかっていても文章中に出てくるとわからなくなってしまう子は意外と多いものです。「は・が」がついたら主語という思い込みをなくし、文脈に合わせた理解が必要になるのです。
特に6年生は過去問演習時期になるとこれまで以上に記述問題でてこずる子が増えてきます。なんだかおかしな答えを作っている・誤読が多いという場合は「は・が」の使い分けをふくめ、助詞と助動詞の使い分けが正しくできているかを確認することをお勧めします。
余談ですが、英語では文法があれほど重視されるのに日本語はそうではない。でも、正しく読み書きをするために、最低限、日本語文法は理解しておいたほうがいいのではないかと思います。中学で学習する口語文法。正しい日本語を書く際に役立ちます。中学受験生は国文法を、基本的には学習します。ただし、文章理解に応用するという視点ではなく単独の知識のように扱われることが多いので、生徒も文法を軽視しがちです。「文法はやらなくていいですよね?」と聞かれることがありますが、4年生・5年生はしっかり学習してください。6年生は時期と現在の理解度、志望校のレベル傾向によりケースバイケースですが、文法を切った場合、中学入学後しっかり学習してください。
中学で学習する動詞の活用の種類と活用形、可能動詞などをしっかり覚えていれば、ら抜き言葉で間違えることはありません。また、主体が目上の人が身内かで尊敬語と謙譲語を使い分けるということを覚えていれば、敬語も難しくはありません。
学校で学習するものを社会で役立たないと切り捨てることは簡単ですが、実際はそんなことはありません。役に立たなくなるような学習をしていたから役立たせることができなくなっているのです。