小学生から鍛えるべき力

夕方から夜は家庭教師をしていますが、昼間は教材制作を中心に仕事をしています。小1~大学入試までの国語・現代文・小論文が中心です。ようやく私立大学医学部すべての小論文分析、傾向と対策記事の作成が終わりました。国語の分析ってなんて楽なんだろう! となんど思ったことか……。小論文の問題、高校入試程度ならテーマはとてもわかりやすい。でも大学入試の小論文、特に医学部入試の小論文はやっかいです。

たとえば、以前話題になった愛知医科大学。判じ絵をみて絵の意味することと人を愛することについて論じさせる問題。今年開設された国際医療福祉大学医学部の「自由貿易と保護貿易について」論じる問題。今年の順天堂大学医学部の「戦場で猫に餌を与える兵士の写真」を見て感じたことを述べる問題。一見、医療と関係がないように思われるものもあります。

このとき必要となる力は何か。

最低限必要なのは、「なぜ?」と問う力、そこから課題を発見する力、論理的に考え、他者に理解してもらえるように論理的に伝える力です。これらの根底になるのは批判的思考力と論理的思考力です。

今年の入試から小論文を入試科目に追加した東京慈恵会大学では、小論文において「自分でしっかり物事を考え、その考えを他者に分 かりやすく伝えようとする力、さらに、今自分が持っている知識を基に状況を理解して判 断する力を評価」すると公表しています。批判的思考力と論理的思考力の有無を見ていると言えるでしょう。

これらの力は大学入試を意識してから養成しようと思ってもかなり難しいものがあります。

では、小学生のうちからできることとは何でしょうか? それは、「なぜ?」と考える習慣をつけること。これがとても重要です。そして、家庭内で会話をするとき、大人と会話をするときは単語ではなく、文で会話をすること。どれも難しいことではありません。でも、それができていないと後々苦労することになります。

「でも、こんな特殊な問題なんてそうそうでない。医学部を受験しないなら関係ないのでは?」と思われるかたもいらっしゃるかもしれません。はたしてそうでしょうか? 大学入学共通テストの問題を見るとそうとも言えないと思います。大学共通テストの国語で評価する能力について、「多様な文章や図表などをもとに、複数の情報を統合し構造化して考えをまとめた り、その過程や結果について、相手が正確に理解できるよう根拠に基づいて論述し たりする思考力・判断力・表現力を評価する。 設問において一定の条件を設定し、それを踏まえ結論や結論に至るプロセス等を 解答させる条件付記述式とし、特に『論理(情報と情報の関係性)の吟味・構築』や『情報を編集して文章にまとめること』に関わる能力の評価を重視する。」とはっきりと明記されています。

今から20年以上前になりますが、早稲田大学の第一文学部の小論文だったと思いますが、サカサマの世界地図が出され、思うところを述べるという問題が出たことがありました。(ちなみにこの問題では、北半球に先進国が集中し、南半球に途上国が集中していることに気づき、そのうえで北半球が上に来ていることをなぜかと考え、自分の考えを論じられるかがポイントかと)ゆとり教育前の時代です。いま、ゆとり教育が終わり、論理的思考力・批判的思考力の必要性が叫ばれています。このような問題が出てきても不思議ではありません。

大学入試前になって慌てることがないように、早めにできることをしておくといいのではないでしょうか。それは決して高度なことではないのです。