今年の逆転合格

毎年一人は必ずいる逆転合格。といっても逆転できるようにある程度はこちらがもっていってはいるのですが、最終的にはやはり生徒の底力がものをいう。

そして今年も出ました。逆転合格。

医学部進学コースがある、大阪の私立中学を受験した生徒。11月の初めの段階では、下のコースは受かるだろうが医学部進学コースは厳しい状況。11月の半ばから記述問題の弱点克服のため、週1の授業に追加して週3でメールとファックスを用いての記述問題指導を実施。この生徒の場合、記述で点が取れないのは読解力がないのではなく、表現力に問題があったから。解答の根拠や答えたい内容を質問形式で確認すると私にわかるように説明はできるが、誰にでもわかるように説明ができない。彼女のくせや思考パターンからこういうことを言いたいのだなと私はわかるが、それをわかっていない人に伝わるようにまとめられない。そのため、この点を克服するための課題を出し、週3回確認を行った。同意表現を繰り返さない、主語と述語の対応が正確で明快な文章を書く、キーワードを外さない、文脈を押さえた読み取りをするなど、過去に受けた模試の記述問題から問題をピックアップして課題として出した。

すると、12月になり、記述問題の解答精度が上がってきた。それでも模試の志望校判定はDやE。正直、この時期の判定なんてあてにならない。入試過去問を重点的に行っているので、模試で取れなくても気にしない。過去問でどれくらいとれるかが問題。塾の先生からは国語は上がってきていても、算理のカバーができるほどではないから医学部進学コースは受からない、と言われていた。でも、なんとなく勝算ありと感じていた。算理の弱点克服を家庭教師の先生にお願いしつつ、国語ではとにかく取れるだけ点を取る方向にもっていく。そして冬期講習になり、彼女の成績は急上昇。過去問の国語では合格ラインを大きく超えて8割を取れるようになった。

そして、見事合格。一ヵ月前には受からないと言われていた第一志望校の第一志望のコースに。

彼女の最終目標は中学受験に受かることではない。祖父の跡を継いで医者になること。おじいちゃんの跡を継ぐ人がいないから、自分が医者になっておじいちゃんの跡を継ぎたいと言う。夏にあげたお守りの裏に願い事を書く欄があった。多くの生徒は「〇〇中学合格」と書く。でも彼女は「祖父の跡を継いで医者になる。」と書いた。中学受験のその先に目標を設定している子は強い。毎年逆転合格を果たす子は、そういう子。合格ではなく、合格のその先の目標を見つめている。

去年、逆転合格した子の一人も、「めっちゃお金もうけしたい、だから自分で会社をつくる! そのためにこの中学に行ってこの大学に行って勉強したい」と話していた。目標は何でもかまわない。「お金もうけをしたい!」。「いいじゃない!」と私は思う。その目標に向かう中で、お金もうけをするための目的が明確になったり、変化したりするだろう。働くことの意義に気づくこともあるだろう。それでいいと思う。大切なのは、中学入試合格を人生の最終目標にしないこと。中学入試も高校入試も大学入試も人生の通過点に過ぎない。その後にはるかに長く、明るくもつらい人生が続く。学校教育を終えたあと、どう生きたいか、何をしたいかをぼんやりとでもいいから持ってもらいたい。

そして、教育に携わる私たちは、生徒たちが入試を終えたあとの人生の目標を持てるように指導をしていかないといけないのだ。