読書感想文が書けない場合、重大な問題が潜んでいることも……

夏休み中、読書感想文の宿題で苦労した生徒さんも多いのではないでしょうか。特に中学受験生にとって、読書感想文は本も読まなければならないため、最も嫌がられることが多い宿題の一つです。入試に関係ないから読書感想文はできなくてもとおっしゃる方もいらっしゃいますが、読書感想文が苦手な場合、読解に関して、重大な問題が潜んでいることがあるので注意が必要です。

それは、「なぜ」を問う力と文脈に即した理解をする力。

登場人物がなぜこのように考えたのか、感じたのか、行動したのか。それを自ら問う力が不足している場合が非常に多いのです。この力が弱いと、心情理由や心情理解の設問で、「出来事→心情変化→出来事→中心となる心情」という一連の流れを読み取ることもできなくなります。

また、「なぜ」かを問えても、出来事と心情の関係を文脈に即して捉えられないこともあります。国語の問題はあくまでも文章の流れに即して心情を理解するもので、自分はどう思うかは関係ありません。文章中の様々な情報をもとになぜこのように思ったのか、なぜこのような行動をしたのか、その原因にはどのような出来事があったのか。それらを手がかりに心情を理解するのです。この力が弱いと、読書感想文を書くのは非常に難しくなります。

 

自分がどう思うか以前に、何があって主人公はどのように思ったのかということを理解できていなければ、それと比較して自分はどう思うかは書けません。読書感想文が書けない場合、この「出来事→心情変化→出来事→中心となる心情」という一連の流れを自分で捉えることができないことが多いのです。この場合、文章の中での細かな心情変化が起きていても気づかないことが多いため、全体内容を踏まえたうえで心情変化を答える問題になると解けなくなります。

もちろん、心情と出来事、行動の関係を理解できていて、自分の考えだけが書けないという場合もあります。その場合は、生活体験の不足や種々の状況を考慮したうえで自分がどうしたいかを考える力が不足しているのかもしれませんまた、語彙力の不足で思考する力に限界が生じている場合や、自分の考えを正しい日本語を使って文章化する力が不足している場合もあります。

作文は国語の総合力だけでなく、コミュニケーション能力も問われるものです。もし、読書感想文が苦手であるなら、小手先のテクニックではなく、根本にある原因を明らかにして対策することが必要です。